第八話 人捜し


 とにかく、バハムートの奴が飛んでいった方に急がないと。
「何で何も言わないんです?」
 街へと走る途中、ルナに声をかけられる。まぁ、他人様の首に噛み付いたんだし少しはお咎めがあるだろうね、普通。でも、
「俺に何か問題が在った訳じゃ無いだろ?」
 ……ちょっと首が痛いけどね。徐々に治ってきたから問題は無いし、と付け足すと、それでもルナは不思議そうな顔をする。
「失礼ですが、貴方はヴァンパイア?」
 でなければ私に噛まれた時点で私と同じに成るはず、とルナは続ける。んー、と考え込むというよりは、言うべきか言わざるべきか、と言った表情を見せた後、和途は答える。
「俺の能力の問題さ。俺はヒトとしての終わりを回避することが出来る」
 つまり。その終焉を崩壊させる能力――オメガブレイカーが消えたその瞬間に、ヴァンパイアだかヴァムピーラだか、そんなのになる事となる。
 と言っても、能力無効化なんて能力を持ってる奴なんてそうそういないし恐らく大丈夫だろう。恐らく。
 と、そんな会話もほどほどに街へと突入する。火こそ少し燃えている物の、其処まで酷い状態にはなっていない。
 誰かが鎮火しているか、それとも。
「敵は、既に目的をすませたか」
 ルナが呟く。その通り、と呟き、そして和途は考え込む。奴らの目的は何なんだ? 俺やこの街を襲ったってことは、取りあえず俺達ファンタズ・フラグメント関連だろうが……。
「あれ、そういや章人の奴は?」
 いつの間にやら何処に行ったのだろう。パンドラの反応は消えていないから死んではいないだろうが。取りあえず図書館へ行ってみる。レディは快く和途達を迎えてくれた。
 一応臨時の避難所、という事となっているらしい。サン・ミゲルの住人は大体此処にいる。下手に街から出るより安全なのだろうか?
 ミーシアが見あたらないのでレディに聞いてみる。と、収容しきれなかった人達は暗黒街(と言っても世紀末世界に在った物を象った、言わばレプリカだが)の方に居るらしい。
「和途、一体コレはどういう事なんだ?」
 卓斗がひょいっ、と物陰から姿を現した。コイツもファンタズ・フラグメントでこそ在る物の、シンセカイに来て以来全ての能力を何故か失った。
 平和なんだし良いだろ、と本人は言っていた物の、このような自体となってはそうも言っていられない。彼の背中越しに楓の姿が見えた。
「俺も解らない。……けど、取りあえずあの飛龍をどうにかしないと」
「じゃあ僕も行こうか?」
 いつの間にいたのやら、義和が後ろにいた。跳び上がるようにして和途が後ろを振り返ってから冷静に考えてみる。
 コイツも能力は失った。が、元々がスペックの高い人造人間、有効な武器さえ持てば戦っていけるだろう。
 ソゥハイト自体は元々どんな存在でも所持する物だし、義和の場合はAI自体にソゥハイトのデータさえ組み込まれていた記憶がある。が、
「いや、コイツと一緒に此処を護っておいてくれ」
 言い、ルナを前に押し出す。一瞬状況が把握できなかったようだが、直ぐにルナは義和に礼をする。
 ルナがヴァムピーラというヴァンパイアに似た者で在ること、覚醒した際にはその場で抹殺する事も構わないという事を伝え、和途は図書館を出て行った。
(アレ、もしかして僕って押しつけられただけ?)
 義和のふとした疑問は風にながれて消えていく。そんな義和を見ながら卓斗が溜息を吐いた。


 凌の設立していたギルドに入ってみる。一応ヴァンパイアハントを中心とした場所であったし、それなりに強い奴らも集まってるだろう、と踏んだら。
「あぁ、和途さんか」
 居たのは総司だけだった。凌は、ソゥハイトの遺産(ソゥハイトによって使用可能となった装備は何故だか残った。ロンギヌスだとか)を所持するため、そこらに現れた機械兵達の掃討の為に走り回っているらしい。
 麗華は魔術が使えるし、問題は無いだろう。
 かくいう総司は戦闘向きというよりは、痛みの吸収など、比較的サポートに特化したような能力のため、此処に居る。
「悠斗さんや俊哉さんは暗黒街に居ますよ。真那さんは何処に行ったのやら」
 ふぅ、と総司は溜息を吐いた。真那の奴は結構ひょろひょろと行方不明になるから困ったモンである。が、そこらで死ぬほどヤワでも無いので放っておいても問題は無いだろう。
 何はともあれ暗黒街までさっさと行くことにしよう。


 着いてみると、其処は暗黒街という名は余り相応しくはない場所だった。それなりに人が居るせいか寂れた感じは余りせず、人の少ないだけの場所、みたいな感じだ。
「っと、悠斗」
 歩くと、直ぐに悠斗を見つけた。無理矢理イセリアに配給されたらしき食料を食べさせられている。
 本人嫌そうな顔だが、見てるこちらからすれば比較的羨ましい物である。リタがイセリアを尊敬のまなざしで見ようが俺には関係ない。
 ジャンゴの姿が見あたらないが、アイツの太陽仔としての能力は消えては居らず、つまりはそこらで戦っていると言うことになるだろう。
 で。何が疑問かと言うと。
「何でお前が此処に居るんだ?」
 悠斗は確かにソゥハイトやペルソナの能力は失った。……が、藤薙流(と言っても彼は世刻で在るから多少違うかも知れない)の剣術が在ればどうとでもなるのでは?
「アイツらにはソゥハイト系統の能力が無くちゃ話にならないだろ?」
「だけど、物質全ての死を辿れるあの力は?」
「残念ながら、それは俺が元来備えているという訳ではない」
 色々と複雑な事情がありそうだ。ペルソナの能力も無ければ覚醒出来ないとかそんなのだろうか。
 考えていると、悠斗が奥を指さす。ミーシアは向こうにいる、という意思表示だろう。恐らく、天使としての力でも使って、結界維持でも行っているのだろう。
 と、大気を揺るがして咆吼が響き渡る。同時に結界が一瞬だが確かに揺らいだ。つまり、
「っ、ミーシア!」
 全力で、和途が駆け出す。それを見た悠斗が、イセリアに荷物を渡し、背中に剣を背負う。間に合うかどうかを考えることもなく、彼も走り出した。
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