第三十六話 Past and Future


 しかしそれで殺せる相手ではない。
『殺せるとも思ってないがな』
「くはははは! 無駄だ無駄だよ! テメェ等如きがこの俺様を殺せる訳が無ぇんだぁぁぁ!!」
 ラグナロクを、パンドラが纏う。
 その全ては、ミーシアを狂わせて手に入れたアリスによく似たその力が制御している。
 ……くだらない。


「過去も未来も、時空さえも超越して、それが何になる」
 人は、生きている。
 限りあるその命を生きている。
 いつかそれを終える事を解りながら生きている。
 それが循環する世界。そのささやかな幸せを世界はただ祈る。
 その世界を手に入れて。
 終わらない命を手に入れて。
「生きる事をやめて、それが何になる!」
 お前程度に、終わらせない、未来は!


 世界の全てを、この手に集める。
 白い翼は華の様に散り、そしてこぼれ落ちた光は俺の手に。
 たくさんの人たちの、これまでの過去。
 そしてささやかな幸せを望む、これからの未来。
 その全てが生きている、――今!


 世界がこの手に集まると同時、目に見える世界は消失した。
 それはそうだ、その全てさえも今は俺と共にある。
 目の前の終焉を砕こうと。その先の未来を紡ごうと。


 終わらせはしない、この幻想を!
 叶えてみせる、この夢を!


「全てを討ち崩せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 終焉を纏ったその一閃を、悪夢は振りかざす。


 世界がいつか僕にくれた武器、幻萼。
 夢の蕾だったそれは、今、華を咲かす。
 切っ先を真っ直ぐ、向かい来る終焉、そしてその先の悪夢に合わせる。
「終わらないさ、この世界は」
 春日の感覚も幻萼の纏う光の中に溶け込んでいく。
 世界の全てをその刃に、ゆっくりと和途は幻萼を構える。
(結局、一緒に戦って貰っちゃったな)
 幻萼を握る手に、大切な人の手の温もりを感じながら、和途はそんな事を考えた。


 何もない場所で。


 真っ黒な終焉と。


 真っ白な世界。


「――アルストロメリア!」


 世界は、終焉の先、未来を切り開く。
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