第三十五話 きっと夢見た物は
目の前にいるソレは、
間違いなく自分の求めていた物だった。
何故だ、何故コイツは、
「何で、だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
叫ぶ悪夢の目の前に、
純白の翼を持った和途が浮かんでいた。
その背に宿るのは全ての世界。
ラグナロクにパンドラを手に入れ、アリスの紛い物まで生み出して。
そこまでして、手に入れたかった物。
目の前に浮いているのは、その全て。
「俺は、俺の夢を叶える」
循環し続ける、それが世界の役割。その中に“夢”などという“世界の意志”が存在してはいけない。
だからこそ、世界の描いた幻想――それはバグ。
システムに発生したバグ――それが世界の見る夢、ファンタズ・フラグメント。
それが、あるべき姿では無いとしても。
求めたい物が在る事を、誰が咎められるっていうんだろう。
「勝てるか“悪夢”! 全ての世界の全ての幻想を食らい尽くせるのか!」
「お、おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
透明な大剣を悪夢は振り上げる。
白い世界をその背に、和途は空を駆ける。
透明な大剣を弾き飛ばし、そして幻萼で目の前にいる敵の頭部目がけて切り裂く。
それをかろうじて避けた其処に、
『逃がすかよぉぉぉぉッッ!』
同じ力。
レイプトラズトが透明な槌として殴り飛ばす。
「ごっ、」
弾き飛ばされた春日を和途が追う、
『神殺し、上だ!』
もう一人の和途は頭の中で叫ぶ、同時にレイプトラズトが障壁として展開され、
貫かれる。
ズガン、と派手な音がすると同時に、光の柱によって和途はたたき落とされていた。
「言っただろう? 俺は世界を掌握出来るだけの力がある」
肩で息をしながら悪夢はそう言った。
和途の目線はただそれを射抜く。
次の瞬間光の柱を打ち消し、同時に真那の奥義がこちらへと飛び来る。
「鬼灯疾ッ!」
「幻越ィィ!」
一閃。
それらは鬩ぎ合い、そして退かない。
しかし、
「失せろ」
悪夢のその一言に閃光は消え失せ、そして和途が貫かれる。
そのままの勢いで吹き飛ばされ壁に激突する。
世界の全て。
それでも、全てを食らいつくそうとする悪夢には及ばないのか?
「全部を終わらせる終焉は此処にある!」
猛々しく彼は叫ぶ。
その終焉を動かす鍵は手中に、
その終焉を操る力もその手に。
それに対して俺は勝てるのか。
『違うだろ?』
その通りだ。
勝てるか勝てないかじゃない。
――勝つんだ!
希望の白い鳥――ファルオスが、吼えた。
全ての世界に存在した春日和途の力が俺の中へと雪崩れ込む。
その男は愕然とした表情を見せた。
「何故、だ? 何故だ、全ての俺はこれを望んでいたんじゃ!?」
『馬鹿が、誰一人としてお前に着く“俺”なんざ存在しねぇよ……!』
ぶんぶんと頭を狂った様に振り、
「まだだ、まだラグナロクがある! パンドラでこいつは開ける、完成したアリスの力でこいつは操れる!」
狂った様にそれは叫ぶ。
「あひゃ、ひゃはは、くひゃひゃひゃひゃけきゃききききききききききききききき!!」
たった一人そいつは春日和途としての力の全てを透明な一撃として放つ。
(春日)
『わぁってら』
ゆっくりと和途は全ての春日和途の力を幻萼に纏わせる。
「くきゃ、き、消し飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
『おおおおおおおおおおあああああああああァァァッ!!』
その透明な一撃は、それより何百倍も巨大なそれに切り捨てられた。
『これが俺たちの答えだよ』
そこに居るのは彼一人。
此処に居るのは僕たち。
透明な一閃は悪夢を引き裂いた。
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