第三十四話 例え世界が終わっても
暗い、世界。
『神殺し、……おい、神殺し!』
春日の声が聞こえる。
俺は……負けた?
『ラグナロクをモロに食らって意識が残ってんだ』
オメガブレイカー様々だな、と春日は続けた。
どうやら死ぬか死なないかの瀬戸際のレベルらしい。
恐らく肉体は消滅しただろうから、今俺と春日はただの思念体、だろう。
確かに此処に意識は残っている。
だが俺は今此処から肉体を取り戻してもう一度あいつと戦う術がない。
『だからって諦めるってのか?』
……そんな訳に行くかよ。
『だろうな。……行くぞ』
春日がそう呟いた次の瞬間、
暗い世界は白い翼に引き裂かれた。
「馬鹿な……?」
目の前にいた終焉を背負う悪夢はそう呟いた。
確かに俺の肉体は消滅していた。
けれど今俺は確かに此処に存在する。
この世界に立っている。
ああ、何故だろう。俺の視界に入っているのは倒すべき相手、その向こう側に見える殺しきれないほどの終焉。
だと言うのに解るんだ、
俺の背に、真っ白な光の翼が生えている事が。
『夜が明けないってんなら闇を殺してやる』
それは春日の声ではなかった。
(宵――?)
『やってくれるモンだぜ、宵の奴も』
春日の笑う声が頭の中に響いた。
彼は知っていたのだろうか、宵たちが戦う中で俺に託した物を。
『雨が止まないってんなら雲を切り裂いてやる』
宵はそう呟く。
彼の力が、全ての存在の力を俺と繋げてくれる。
誰だって、目の前にあるその終焉程度で終わらせたくない夢が、たくさんある。
その全てが俺の力になる。
『護りたいものを護れませんでしたなんてエンディング、俺は認めねぇぞ』
宵の声がそう聞こえた。
ああ、みんな俺の中にいる。俺に力を貸してくれる。
俺は護りたいんだ、みんなが居る世界を。
大切な人が居る、この全てを護り抜きたいんだ!!
『あの子を護るんだろ?』
そうさ、終わらせるわけには行かない。
この先の未来も、その先もずっと!
ハッピーエンドの、その先の物語も俺は生きていくんだ……!!
俺の中に居る全てが俺の名を呼ぶ、
俺に全てを託して叫ぶ、
『飛べ、和途!』
全てを護る為の翼が、
真っ白な光を撒き散らしながら広がっていく。
それは城の全てを崩し、そして悪夢の作り上げた暗い世界を引き裂き。
世界を護る為に生まれた白い鳥が、俺に語りかける。
――叫べ、我が名を! 汝が望む、世界を護る力を!
湧き上がる力を押さえきれないかのように和途は天に吼える。
俺には……俺には帰るべき場所があるんだ!!
「ファルオォォォォォォォォォォォォォォォォォォス!!」
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