第三十一話 求めていた最強


「で、だ」
 取り敢えず一段落したところで春日が話し始める。
 和途が痛そうに頭をさすっていてもそれは誰も気にしない事にされている。
「最終決戦としゃれ込む訳だが、どうするよ?」
 ミーシアが今此処にいる。なら、分離した春日を此処に戻さず、
 彼女と共に戦う事も今の俺には出来るはずだ。
 取り返した片翼と共に、飛ぶ事が。
「……ミーシア」
 和途が言う言葉を解っている様に、ミーシアは和途の方を向いた。
 もう和途が問う言葉も、ミーシアの返答も決まっている。
「待っててくれ。絶対に帰るから」
「うん」
 迷い無くミーシアはそう答え、立ち上がった。
 春日の呪縛から解放されたばかりでふらついた彼女をフェルナヘレンが受け止めて階段を下りていく。
 悠斗や震電もその後に続いて降りていく。このタイミングで塔の迎撃システム(宵が先ほど戦っていたらしい)が出てきても困る。
「そうそう、和途」
 春日が和途に話しかける。
 彼が自分を神殺しではなく名前で呼んだというその意味を考えながら和途は次の言葉を待つ。
「今回の俺は最高にウザくて最高に強いぜ、多分な」
「構わないさ」
 そう言った次の瞬間に春日は和途の中に取り込まれた。
 この階段を上った先に居る春日和途。自分の中に居る春日も許す事の出来ない、そんな存在。
「んじゃま、行くとするかな」
 再び謳詠としての力をその身に宿して和途は一歩を踏み出す。


「で、義和よ」
「なんでしょうかね?」
 宵が語りかけた瞬間義和がその真横に降り立つ。
 それを見た卓斗が大剣を紡ぎ俊哉に止められる。
 とっさに理解した俊哉の判断力に感心する様な素振りを見せてから宵は言う、
「頼んどいた事はやってくれたか?」
「やらなきゃ僕が一度殺されかけた意味が無いでしょう」
 なかなかにきつかったですよ、と義和は卓斗の方をちらりと見る。
 俊哉に何か言われたか、不機嫌そうな顔をしながら卓斗はシュヴルツをしまい込んだ。


「なぁ、真那」
「なんだよ」
 悠斗の語りかけに、真那は不思議そうな顔をした。
「忘れてたよ。人間は強くなれるんだった」
「そゆこと、さ。カミサマなんて半端な存在の俺らと違って、な」
 左手に着けられたミスリル製の指輪を見ながら、真那は笑った。
「俺も人間なんだがな?」
 震電の呟きにそういえばそうだったと言った感じで、
 真那と悠斗が同時に吹き出した。


 最終階一歩手前。
『さーて、和途よ』
(その呼ばれ方は奇妙だな)
 自分を“和途”という存在として扱ってくれるのは嬉しいのだが、その呼ばれ方はなんだか違和感を覚えてしまう。
『じゃあ良いや、神殺しよ。さっきも言ったが一応今回の俺は多ぶn
(どう転がろうが勝つ、それだけだ)
 相手がどれだけ強かろうが、
 自分より幾ら上だろうが。
 帰るべき場所がある。待ってくれている人がいる。
 あの子がいる場所へ、俺は何があっても帰る。
『上等だ。さっさとぶちのめして帰るとするか』
(そうしたいモンだな)
 最低限其処に展開されている結界を、
 幻萼が切り裂く。
 同時にいつか感じたプレッシャー、それは更に凶悪に和途を射抜く。


「来たか」
「来てやったよ」
 短い会話、
 そして春日和途は真横に立っている女に触れる、
 それと同時にその女は崩れ落ちた。
『入れ物、か』
「ビンゴだよどっかの俺様。天使から奪い取った力の入れ物、さ」
 そして時は満ちたと彼は続ける、
 取り出した光の球から感じられる力は――、


「……アリス?」
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