第二十九話 僕と君が望む世界
「言っただろう、神殺し」
宵も合流し、全員が和途の上っていった先を見つめている中、
春日は一人呟く。
「お前はもう気づいてる、ってな」
「お願い、……だか、」
らの音を紡ぐ前に、押さえ込めなかった力が和途の右肩を射抜く。
動じる事もなく、和途は其処に立っている。
その瞳はただミーシアを見つめて、
「い、や。――殺させないでぇ!!」
幾千の翼が、剣の様に和途に襲いかかる。
ミーシアの意志なのか、致命傷をぎりぎり避けるようにしてそれらは突き刺さる。
ズルリとそれが抜け、和途は崩れ落ち
ない。
「大丈夫、だから」
オメガブレイカーの意味もない。
神殺しの能力、“ルールを殺す”、それの元々はミーシアの力なのだから。
それでも和途は避けない。
そして退かない。
崩れかける足を無理矢理に立たせ、一歩踏み出す。
ビクリとミーシアが震え、次の瞬間には雷撃が飛んだ。
それを真正面から受けながら、もう一歩踏み出す。
「やま、と」
泣きそうな声で彼女は言った。
それに向かって、和途はただ笑いかける。
あと五歩のところまで来た。
「この場に居る全員が、ハッピーエンドを望んでる」
だから悠斗も宵も、真那や震電も和途と敵対する様な場所に着いた、
そして彼らの意志を知らない人間でも、和途の味方をする位置に立った、
それは全て彼の望む幻想を、自分たちも望んだから。
目の前にある幻想を掴み取るのは、彼自身にしか出来ない事。
「お前は俺とは違うんだ、夢ぐらい叶えて見せろ。――、和途」
その名は、確かに彼の物となった。
全ての羽が刃となって和途の腹部を貫いた。
それでもその意志は揺らがない。
翼は刃から元の形に姿を戻していく。和途の身体に突き刺さった其処に引き寄せられるようにしてミーシアは和途の目の前に立つ。
「、和途」
泣きそうな、彼女自身の顔で、彼女は言う、
「死にたく、ない。生きてたいよ」
それは彼女自身の本当の願い、
彼女が封印し続けてきた彼女自身の幻想、
「貴方と一緒に生きていたいの!」
それを叶えないで俺に何をしろっていうんだ――!
「帰ろう、……俺たちの世界に」
その手は、届いた。
もう離さない様に。きつく、彼女を抱きしめた。
「おかえり、ミーシア」
「ただいま。……和途」
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