第二十六話 俺は、あの子と居る為に
「真那が負けた――?」
「実力、ってのはあるだろうけどさ、勝敗を決めるのはそれだけじゃないだろ?」
それはお前だって知ってるはずさ、と和途は言う。
塔と連結した悠斗の背に、紅い翼が生える。
いや、それは翼だなんて物ではない、禍々しい――空のようなそれ、
「禍日」
襲いかかる刃を幻萼で全て受け流す。
二手目、
「獅子縅」
襲いかかる幾千の重圧、
その全て一つ一つが必殺の意を冠すると言ってもそれは決して過言ではなく、
しかし和途は迷わない、
「神文鉄火ぁぁぁ!」
薙ぎ払う深紅の一閃がその全てを打ち砕く。
今度はこちらの番、と和途が空を駆ける、
「舞紫電!」
紫紺の魔法陣を切り裂き稲妻が悠斗へと幻萼と共に襲いかかり、
それは紅い翼にせき止められ、そしてそれを止めた翼から更に刃の様に閃光が射出される。
春日の展開させたレイプトラズトがそれを悉く防ぎそして
「黒鷹」
一閃にて打ち破られる。
しかしそれを見抜いていた和途は炎の大剣でそれを防ぎ、
「鬼灯疾!」
炎の砲弾の様に悠斗へと突っ込む。
しかし悠斗が突っ込んだその和途に手を触れ、
世界が漆黒に閉ざされる。
「な、」
「世界を紡ぎ、崩し壊す」
二種の意味のホウカイ。
天泣のモーション、しかしその身に纏うのは世界を殺す力、そしてアルトネリコからの砲撃。
ズガン、と音を立てて和途の頭部が貫かれた。
「何でお前がそっちに居るんだ!」
振り下ろされたシュヴルツを、義和の長光はいとも簡単に受け止める。
「他の僕がどこにどう着いていようと僕が同じように着く道理は無いでしょう?」
爆刺突、
数えるのが面倒な程度の杭状の魔力が卓斗へと襲いかかり、
「巨王!」
巨大な光の剣がその全てを薙ぎ払う。
義和が次の一撃の為の魔力を練っている其処に
「煌月崩壊っ!」
幾百のそれらが降り注ぐが、
しかしそれは義和の計算の内。
「鬼抱擁」
冷静なままに紡がれた呪は半円状に大気を包み込み始め、それに触れた端から卓斗の氣が炸裂させられ爆ぜ消える。
(あれの中に入ったらアウト、)
しかしここで逃げても追いつめられるだけ、ならば、
「紅鬼のっっっ、」
あの半円の中に入ってから爆撃判定を貰うまでのタイムラグ、その一瞬で消し潰す。
「掌あああああああああああああ!!」
「落流星ッッ!」
横の一閃と紅い閃光が交差する。
「終わらせるかァァッ!」
「何!?」
和途の右腕は世界の全てをそこで殺さずに止めていた。
オメガブレイカー。全ての終焉を討ち崩す、ゲート騒動の最後で手に入れた力。
天哭の為に突き出されていた腕を掴み取り、そして真下へと投げつける。
真上に居る和途に目線を向けたままに、目線とは逆方向に禍日が延び、突き刺さり落下を止め、
「こ、っの!」
紅の一撃が幻萼を弾き飛ばし、
そして丸腰になった和途の顔目がけて放たれた蒼の一撃は、
剣状に形成されたレイプトラズトによって止められる。
「でりゃあああああ!」
薙ぎ払うそれをかろうじて紅い翼で受け止めるが吹き飛ばされる。
体勢を立て直し和途の方に視線を向けると、ちょうど爆発によって幻萼を手元に戻したところ、
「お前は、……お前はあの子を殺せるのか」
その問いは、俺に向けた物なのだろうか?
かつての自分に悠斗がその言葉を向けているように和途は感じた、
イセリアを殺した、その瞬間の悠斗自身に。
「知るかよ。俺はあの子と一緒に居たい、それだけだ」
他に理由は要らない、和途は幻萼を低く構え、
和途の返答を受けた悠斗も構える。
藤薙流奥義。稲妻を纏う彼自身がそれを放つと物語っていて、
「天泣!」
「幻越!」
二つの必殺がぶつかり合った。
前へ/戻る/次へ