第二十三話 僕の周りに居る人たち
階段を上った先に居たのは、
義和やカーナー、結奈に邦仁。
ついこの間こちら側の人間をぼろぼろにしてくれたような奴らばっかりだ。
「予想よりまだマシな状態でこちらに来ていますが」
純粋に驚いたような顔で義和がこちらを見た。
「それでも僕たちに勝てない事くらいは解るでしょう?」
その問いかけは余りに分かり切っている事を聞いていた。
今なら見逃してやる、とでも言いたいのだろうか?
でも、それに対しての俺の返答だってこいつは大方予想が着いているのだろう。
「解ってるんだろ? ……退く訳にはいかないんだ」
血まみれの身体で、それでも和途はそう言い放った。
溜息を吐いた義和が、次の瞬間振り下ろした剣は大剣に受け止められた。しかしそれも予想していたかのような表情で義和は卓斗と対峙する。
「行かなきゃいけねぇんだろ? ……行って来いよ、和途」
カーナーが其処に介入しようとし、総司に止められる。
次の瞬間に、和途の傷や痛みが全て消える。総司の肩に居る猫が誇らしげににゃあと鳴く。
「大丈夫です。むしろ早く先に行って俺を解放してください」
笑いながらこいつは言った。
世界を保つ為に居る人間、荒城邦仁は、自分の正義のために、目の前にいる俊哉と対峙する。
「卓斗の知り合いなんだろ? だったら助けない道理は無いさ」
それほどまでに卓斗を信頼している彼は、同時に和途を信頼し、そして道を開く。
その様子を面白そうに見守っていた結奈に、憐奈が攻撃を仕掛ける。
「ここまでさせてハッピーエンドじゃなかったら怒るわよ?」
言って、彼女たちは戦いを始める。
一瞬だけ彼らを見つめた和途を、
「和途さん!」
フェルナヘレンの声が引き戻す。
目が合うと彼女は頷き、そして二人は城の上階へと駆け上っていく。
階段を上ったところにまたあったドアを蹴飛ばすようにして開ける。
其処に立っている紅い瞳の少年。
「……来たか」
藤薙悠斗は、其処に立っていた。
「よりによって、な相手だな」
肩をすくめながら和途は言う。
次の瞬間襲いかかってきた紅と蒼を纏った両腕、それによる一撃を幻萼で受け止める。
「女の子と戦うのは趣味じゃないんだけどね」
「それでも私には戦う理由があります」
フェルナヘレンが自らの力を解放し、そして朱い大剣を背負った真那と対峙する。
和途と同じように総司によって痛みや傷を回収された彼女は紅と翠の目線を真那に向ける。
「さて、傍観者、ってところがお似合いかな」
震電がそう呟いたときに、下の階から人影が一つ飛び込んできた。
「貴方の相手は。私」
二月夜宵が其処に立っていた。
「――、凌か」
ご名答、と夜宵の口が言葉を紡ぐ。同時に彼女の姿は彼へと変化する。
ソゥハイトの表面具現。少し間違えば自らを永久に思念体としかねない行為。
しかし彼女は特別。和途と春日のような、根本的な相似。
その力を継ぐために生み出されたそれの代替品であるならば、どう転がっても常に表と裏は安定している。
「俺は俺の正義の為に動く。ってことで相手してもらうぜ、震電?」
良いだろう、そう言った震電は腰に下げた雷帝をスラリと抜く。
「悠斗、何でお前はそっちに居るんだ?」
「……お前にあの子は救えない、それだけだ」
いつになく厳しい目線をこちらに向けた悠斗、
そしてその腕が『殺す』為に動く。
「軍鶏!」
食いつぶすようにして押しつけられる破壊の概念。
その概念を幻萼で切り捨てる。其処に突き出された蒼い力を受け流し、紅い力と真っ向から紅蓮を纏って長剣となった幻萼が鬩ぎ合う。
数秒間ぎちぎちと大気を軋ませていた二つは、耐えきれなくなった紅蓮の炸裂によって距離を離される。
「意地でもミーシアは助け出す」
「お前、それが何を意味してるのか解っているのか……!?」
いつになく、悠斗が焦っているように見えた。
彼は、俺に何を伝えたいのだろう?
「塔結線作動――」
爛々と光る紅い瞳が、慌てるように呪を紡ぐ。
ざわざわと大気を揺るがす程の力が、これから彼が何を喚ぶかを物語る。
「“ALICE”」
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