第二十話 圧倒


 城、と言ったって城があるだけで、
 別に見張りが居るわけでも門番が居るわけでもない。
 そんな城門をあっさりと開き中に入る。しかし其処が既に敵地であることだけは間違いない。
「来た。ね」
 出迎えたのは、
 二月夜宵。
「夜宵さん!」
 パンドラに遭遇して以来見る事の無かった姿にフェルナヘレンが声を掛けると同時、
「ルナ!」
 和途がフェルナヘレンを突き飛ばし、そして飛来した一撃を幻萼で防ぐ。
「ん、防ぐか」
 切り捨てようとした黒い刀を弾かれ、男は少しばかり離れたところに着地する。
「宵!? なんでお前が――!」
「いや、面白そうだったしな」
 それに真那達の思惑も解ってる、と彼は続ける。
「……邪魔するなら……」
「斬る、ってか? 良いだろう、かかってきやがれ」
 もう一度、今度は互いの明確な殺意によって、刀と短剣が交差する。
 なんで夜宵がこっちに――!?
 考えている間に宵の力によって弾き飛ばされる。視界の端ではフェルナヘレンの爪が夜宵の槍と交差しているのが見えた。
「止められるか?」
 言って、宵は刀を真上に投げ捨て、両腕を真横に突き出す。
 まるで翼のように広げたその手が、あり得ないほどの魔力を発する。
「“Encroach Valhalla Absolute”」
「が……っ!?」
 発動された力、その余波だけで吹き飛ばされかける。
 余波程度のものなら普段から張っている魔法障壁だけで十分防げるはず。
 それを貫通すると言う事は、障壁では防げないほどの魔力、あるいは――、
(障壁無効、ってとこか?)
『両方、ってオチは出来れば回避したいがな』
 人ならざる人へと昇華したそれは和途の一撃を容易く受け止めそして放り投げる。
 叩きつけられ肺の空気が根こそぎ大気中に吐き出されるのと同時、
『――E.V.A.承認』
 機械的な音声が発せられ、
「儚!」
 閃光がこちらへと押し寄せる。恐らくは砲撃なのだろうがそんな判断をするような暇など一瞬足りとて与えられては居ない。
「っ、おああああああああああ!!」
 春日がレイプトラズトを使用して障壁を展開し、それは無効化された。
 それと同時に障壁は突き破られる。
「な、――!?」
「防げると思うなあっ!」
 跳躍し下がろうとした和途の顔面を宵の右手が掴み取る。
『神殺し、やべぇ! その右腕、障壁無効――ッ!』
「畏」
 その一文字の呟きと同時に世界が停止した。
 しかし宵の速度はこちらには視認できる。感覚的には、こちらの動きがあり得ないほど遅くなったかのような、そんな感じ。
「バッドエンドルートだ。ご愁傷様」
 宵の能力によって何かが和途の周りを取り囲む。――、『箱』が見えた。
 それはゆっくりと閉じていき、そして
「罪創=業」
 呟きと共に何千何百の砲撃と巨大な一本の剣が――
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