第二話 Gate
サーバ名【ラグナロク】、ワールド名【パンドラボックス】。其処に、上津章人は存在していた。
ピン、と、宙に浮いた蒼いウィンドウがメールを受信したことを告げる。その画面に章人が触れると同時にメールが展開される。
「……何だ、コレは!?」
メールのタイトルは無題、本文も無し。ただ、差出人は、シンセカイ――春日和途の派生個体、佐上和途が存在する為にセカンドエンディングと呼称されている――の管理者、佐上和途。
添付されていた動画にはとんでもない物が映っていた。
「無効化!? ……くそっ、マジかよ」
短剣は炎を纏い紅蓮の長剣と化している。その一撃を転送されてきたロボットにたたき込むが、何の効果も得られてはいなかった。
ゴゥン、と唸りを上げ、ロボットの目が光る。ピピピ、と恐らくロックオンされたであろう効果音の次の瞬間にはその右手に握られた機銃が火を噴いた。
「っちぃ!」
展開した紅蓮の障壁が全ての弾丸を溶かした。が、次の瞬間障壁を突き破って弾丸が襲いかかってくる。
(……光学兵器!?)
実弾だけだと思ったのが迂闊だった。まさか、たかが先兵である小型兵器如きにレーザーだのビームだのを積ませているとは思わなかった。
……小型兵器だけで、どうやら敵さんはこちらを全滅させるつもりらしい。よくよく考えてみれば、小型兵器とは言えど、今のところこちらの全攻撃を無効としている、当たり前かも知れない。
次の瞬間に、和途の背中から、純白の左翼が展開された。短剣が刹那に唸りを上げ、咆吼と共にロボットを一閃する。
するりと、今度は包丁で食材を切るかのようにして切断されたロボットは、切断面から火花を上げ、爆発した。
「……ソゥハイト対策は流石に完成してないか」
当たり前だ、この世界にしか存在しては居ないバグ、ファンタズ・フラグメント。自身の意志を力として昇華させ具現化した存在。
そう簡単に対策は準備出来ないだろう。……そもそも、精神部分から対策されてしまうような事は早々ないだろうが。
続いて、三機ほどのロボットが一斉に機銃のトリガーを引いた。実弾が何千と和途に飛び来る。
実弾と見抜いた次の瞬間には炎の障壁で全ての弾丸を焼き払う。その中に自身が飛び込むが、炎は和途には何の影響も与えず、爆炎の外へと飛び出る。
ロボット達が一斉に和途をロックオンしなおした次の瞬間、
「失せろ」
三機のロボットが、紅蓮の長剣に薙ぎ払われた。
そして次の瞬間、和途は後ろから何かに貫かれる。
「……!」
ズルリとそれが背中から抜ける感覚と共に、和途は真後ろを振り返りながら一瞬で跳び退る。振り向いた後ろには、先ほどと同型のロボット達が……数えるのを諦めるほど大量に居た。
「おいおい」
呟いた次の瞬間に、機銃が一斉に火を噴く。
「和途……っ!」
送られてきた動画は此処で途切れている。恐らく彼のことだ、生き残ってはいるだろうが――。……とにかく、世界自体は相当危険な状態だろう。
行くしか、ない。
ファーストエンディング管理者、上津章人は覚悟を決める。
もう一度、この禁断の箱で僕は戦う。
蒼いウィンドウに触れると、幾つものウィンドウが更に展開され、更にそれに触れていく。項目の中にある『Gate』に触れると同時、それは起動した。
全てをこの手にしたいというなら、歩き出さなければ何も起きない。目の前に現れた時空と時空をつなげる異空間転移の為の扉――ゲートを、通る。
その手に握られているのは、パンドラボックスの、鍵。
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