第十八話 最初の火
「そろそろ俺は無事に帰れるのか心配になってきたのですが」
「それは俺もだね。……なんで今回はこんなラスボスばっかなんだ」
大きく溜息を吐く。
逃げるくらいの幸せも今はそこら辺で捕まっているのでさっさと取り返しに行かなければ。
それにしても、『彼女』っていうのはなんなんだろうか? 話の流れからしてミーシアを指していそうだけれど、彼女の力は全て俺が神殺しとして受け継いだはず。
『“俺”の目的が本当は神殺しじゃなかったとしたら?』
あの時の春日とは別の春日。今俺と共にある人間が頭の中で呟く。久々に声を聞いたがどうやら無事だったようだ。
(……どういう事だ?)
『あの天使ちゃんに“神殺し以外の力”があるんじゃないか、って話だよ』
神殺し以外の力。
あの春日はゲート騒動の時、ミーシアを狂わせて俺と戦わせ、神殺しを手に入れた俺を殺す事によって彼女の力を得ようとした。
しかし、何故あんな回りくどい事をしたんだ? あの力が欲しかったなら直接奪い取れば――。
『あいつにとって“神殺し”は邪魔だった、ってことじゃないのか?』
つまりあの力は『彼女』と呼ばれる力に対する防御壁だった、と?
「そんなところでしょうかね」
突然横から総司が割り込んできたので多生驚いた。
『ありゃ、こいつにも聞こえるように喋ってたの気づかなかったか?』
「気づくかっつの」
また溜息を吐いた。
「やぁ、来てくれると思っていたよ」
いつだか、機械の兵隊達を和途に差し向けた男は暗闇で呟いた。
其処に章人の姿はなく、男の手に握られたパンドラが、彼がどうなったかを物語っている。
「その口調は気持ち悪いから止めた方が良いと思うがね?」
真那と震電と共に、悠斗が其処に現れる。
言われ、ふむと頷いた男は纏っていた灰色のローブを脱ぎ捨て、その顔を晒す。
「まあ、俺もこんな口調には飽き飽きしてた所だしなぁ。ちょうど良いか」
春日和途が、其処にいた。
「それにしても、アンタがこっちに着いてくれるたぁ意外だね」
春日は呟き、悠斗はただその紅い眼を向けるだけ。
真那も震電も特にこの会話自体に興味を示している様子は無い。
はあ、と溜息を吐いてから言う、
「ま、仕事さえしてくれりゃこっちとしちゃ文句無ぇ訳だがな」
「其処に心配は要らないだろ」
真那がぽつりと呟き、春日は笑う。
確かに悠斗と神殺しの奴は友人という訳でもない、いや、友人であろうがなんだろうが、目的の為には互い殺し合うような奴らだ。
「俺としては時間さえ稼いでくれれば良いし、な」
誰に言うでもなく呟いたその言葉は誰の耳にも入らなかった。
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