第八話 異端者
とりあえず痛すぎるその格好をどうにかしよう、ということでその辺で服調達。近くに町とか在るのか? そんなのはイセリアと悠斗に任せれば直ぐに解決される。
曰く、
「町が無ければ其処に生み出せ」
だそうな。要約すると、次元連結でとっとと街まで飛びました、って事である。
ということで制服も炎上、空気中に灰となって舞っていった。
「ま、少しはまともになったかね」
「そりゃ、制服姿の不良気取り少年よりはな」
言いながら自分の服を点検している和途。ポケットの中を探ってみたりしているが、結局財布と煙草、ライターの三つだけしか所持していないため大して意味はないが。
「さて」
そう一言だけ呟いてから、再びもと居た場所――イセリアの統治する名も無き塔の周辺を見渡す。
「こっから、どう動こうかね?」
「これから、どうするべきなんだか……」
独り呟いたのは、晶波卓斗。そう呟いている割には、大量のダンボール箱を抱えてそこら辺を動いている。どうやら、色々と雑用をやらされているらしい。
「ほら、其処も片付けて置いてくれよ」
言ったのは凌。これで自分は全く動いていない、というのならそれっぽく見える、のだが、彼もまた大量のダンボール箱を抱えている。部下の事を考えながら動くタイプの人物らしい。まぁ、それ故に甘い判断をする、という人もまた居るのだが。
この人物は、どうやら判断を下す時は冷徹らしい。そこら辺のギルドメンバーに聞いた話だが。
で、そのギルドメンバー、黒西麗華だが、そこら辺の椅子に座って、卓斗達を見ている。といっても、サボってる訳ではなく、いかにも魔法使いです、と言わんばかりに手に持った杖をひょいひょい、っと動かし、それと共にダンボール箱が動いている。本当に魔法使いらしい。
なんなら、全ての荷物を一瞬で動かして欲しい物だが、本人は気が乗らないらしく、結局卓斗と凌が運ぶことになっている、という訳だ。
「おっと」
卓斗が何かに躓く。何かと足下を見ると、いかにもな感じに床に着いた取っ手。それはもう、此処に地下室在りますよー、夜中当たりに忍び込んでくださいねー、な感じに。
ということで夜中。片付けを終了させて早めに就寝した卓斗は、取っ手を引っ張って地下室へ来ていた。
こういう場合、何か秘密とかが在るのが相場で在る。適当に持参したライトで周囲を確認しながら、前へ前へと進んでいく。
(にしても、何でこんなに広いんだ……?)
そうこうしながら進んでいくと、少しだけスペースの広い場所へとたどり着いた。部屋の壁から中心へと、這うようにコードが向かっている。その中心には、大きな一つのカプセル。そしてその中にいるのは、
数日前(という表現が合っているのか卓斗本人には解らない)、自分を一度『殺した』男――悠斗。
(あの時の!?)
悠斗、という名すら知らない――否、憶えていない――卓斗は、その手に大剣を持ち、構える。
ジリジリとそのまま寄っていく。が、何も起きない。まるで、死んでいるかのように、カプセルの中の悠斗は動かない。
「……何をしてるんだ?」
「!」
声をかけられ、そのまま後ろを向いた卓斗の目に入ったのは、凌の姿。卓斗の顔には驚愕の表情が浮かんでいた。
『晶波卓斗』の記憶を持たないとはいえ、『異質』へと覚醒した卓斗の感覚は一般人のソレとはかなり違う。だが、凌はそんな卓斗に足音どころか、気配さえ感じさせずに此処まで来た。ギルドを経営している事や、元々の雰囲気から只者では無い、とは思っていたが。
(此処まで凄いとなると……)
身の危険さえも感じながら、身構える卓斗。
「何、命とか、何かを奪うつもりは無いさ」
一言だけ言うと、凌はカプセルへと歩いて近づいていく。カプセルに手を触れ、凌は一言だけ呟いた。
「コイツが、戻ってくるのを待ってるんだ」
卓斗は、剣をもう一度だけ握りしめた。
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