第五話 無限なる夢の中


 俺を潰そうと足が降ってきて、斬られて消えた。
 ……おりょ?
「何……で……?」
 俺の目線の先にいるのは、黒いローブを身に纏った、紅い眼の男。
 ユウト。……ユウト。有栖? 世刻? 藤薙? さぁどれだ。
 ……どれ、って……どれ?
莫大な量の何かが、一瞬で俺の頭を支配する。
「っがああああああああ!?」
 絶叫が轟くが、だから何という訳ですらない。この壊れた世界が、壊れていない世界が――別の世界の情報が――俺の中に流れ込む。
 壊れそうな身体を動かして、ギリギリと卓斗の方を向くと。
「……」
 一つの、大剣を、卓斗は、手にしていた。
「行くぞ……」
 大剣を、化け物を一閃した化け物に――悠斗に――向ける。
 風が渦巻き、卓斗の真横に、一人の少女が降り立つ。
 そして卓斗は呟いた、
「楓」
 バゴン、と大気を爆発させ、卓斗は飛び出した。
 大剣が振り下ろされるが、悠斗は、それを指一本で単純に『止めて』しまう。
「行くぞ、餓鬼」
 パン、という弾けるような音と共に、大剣――シュヴルツごと、卓斗が吹き飛ばされる。
 続けて、浮いたままの卓斗に、
「哭け、咎人」
 幾千もの斬撃が降り注ぐ。シュヴルツでそれを受け止めようとするが、無論全てを受けきる事など不可能であって。
「弾け飛べ」
 素手で卓斗が貫かれる。そして、その一言と共に、卓斗が、
 霧散した。
 が、
「……ほぅ……?」
 悠斗の呟きが、静寂の中に響く。そして、呟きを零した悠斗の目の前に居るのは、
晶波卓斗。
「楓を」
 大剣が、唸る様に光を発する。そして、卓斗の表情が、禍々しい、鬼の如き表情へと変化する。
「二度は……殺させねぇ」
 そう一言だけ呟くと、卓斗と楓は、一つの光となって、何処かへと消え去った。
 そして、悠斗の目線が、和途の方へと向けられる。
「面白い友人をお持ちなようで」
 言われた和途は、ゆらりと立ち上がり、一つの、黒い剣を右手に持つ。
「おやおや?」
 黒い剣から、光がこぼれ落ち、叫ぶような音が響く。
「世界が繰り返される前からの知り合いじゃなかったっけか?」
「思い出したか」
 剣が交わり、
 物語は始まった。
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