第三十三話 王手
「さて、終わりにしようかバケモノ」
悠斗が咎人の剣を構える。ソレを見ながら、章人は笑う。
「っくは、バケモノね、それもそうだ。それは貴様も同じだがなァ!」
別次元でラグナロクに卓斗達が攻撃を仕掛けたからか、章人の体の一部からもノイズが走り、1と0という数字が点々と周囲に浮かんでいる。
「俺のソゥハイト、ラグナロクは絶対なる終焉、誰一人として砕く事は不可能!」
言った次の瞬間、章人の右腕が悠斗の剣によって切断される。
「戯れ言言ってる暇が在ったらその絶対の力でも振るったらどうだよ雑魚」
「テ、メェェェ!」
吼えた章人を、次の瞬間に弾丸が射抜く。瞬時に再生した章人がそちらを見ると、其処に立っているのは太陽少年。
「世界は壊させない。どれだけ、どれだけ貴方が強くても……!」
僕の世界は壊れた。なら、せめて僕の友達であるコイツ等の世界だけでも、僕は守り抜く……!
ボロボロになった両腕を動かし、双対銃の照準を再び章人に合わせる。が、腕がガタガタと震え、トリガーが引けない。
「どうしたよジャンゴ」
悠斗が笑う。笑ってはいるが、彼の体だって既にボロボロ。咎人の剣を構えていられるのが不思議なくらいだ。
「これで終わりじゃないよな、ゴミクズ共」
章人が獰猛に笑う。口の中に吸い込んだ大気を噛み砕くようにして言葉を紡ぐ。
「さっきのアレに耐えたんだ、どうせなら楽しませろよ、飽きてきちまうって」
「楽しませてやるよ、十二分に……!」
ジャンゴが双対銃から弾丸を放つ。ソレは一瞬にして章人に消し飛ばされる。
「うん、オマエ面白くない、とりあえず死ね」
章人がジャンゴに向かって一撃を放つ。それは当たれば確実に『死』をもたらす魔弾。しかし、ジャンゴは死なない。
悠斗の手から投げられた咎人の剣が、ソレを真っ二つにたたき割ったから。
そしてもう一度ジャンゴが双対銃を構える。太陽の如き金色の銃、漆黒の如き暗黒の銃。二つから放たれる一撃は、淡い紫紺色の道を造りながら、章人へと突き進む。
「来い、真那ァ!」
悠斗の叫びと共に、朱い長剣が悠斗の手にもたらされる。朱い長剣が吹き出す炎は、まるで何処かにいた青年を思い出させるようで。
「邪魔くさい、ってんだよ!」
章人が紫紺の弾丸をなぎ払う。そして、ソレが創ってきた道の直線上を見て驚く。
「行け、悠斗ォォォォォ!」
ジャンゴの雄叫びが木霊し、その道が始まった場所に立つのは――。
「終わりだ、って言ったろう?」
紅蓮の炎と深紅の稲妻を纏った、朱い長剣を持つ、悠斗。
みんなが道を創ってくれた。なら、何故迷う必要がある? 目の前にあるその道を辿って、そしてその先にある光を掴み取るだけ……!
「うおおおおおぉぉ!」
和途が吼える。そして幻萼を手に、全力でラグナロクへと駆ける。
「チェックメイトだよ」
悠斗が呟く。そして朱い長剣と共に、稲妻を纏い、章人へと駆ける。
「こ、の……!」
殺されることを覚悟しながら、章人は最後の最後に、最大の一撃を放つ。……ラグナロクの全ての力を、ラグナロクの存在する世界に今、唯一人存在している謳詠和途へ。
刹那の光が和途を殺そうとする。が、構いやしない。俺が死んだって、別に問題なんざ何もないんだ。
(意志は、誰かが継いでいく……!)
終焉を砕く一閃を、己の命の全てを賭けて、討ち放つ!
「終焉崩閃!」
「天泣!」
ラグナロクは砕け、上津章人は貫かれた。
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