第三十二話 開け、道を
「死ねよ」
章人が呟いた瞬間、荒廃した世界で爆発が吹き荒む。
「っぐ!?」
爆風に吹き飛ばされたジャンゴが地面に突っ伏す。
「来い」
また一言章人が紡ぐと、同じように突っ伏している電霊達がふわりと浮き、章人の中へと入っていく。それはまるで、吸収するかのように。
「何かもう飽きた、オマエ等ブッ殺す」
上津章人が、ラグナロクとしての全てを討ち放つ。
「っで、りゃぁぁぁぁぁ!」
卓斗が飛び込み、大剣がたたき込まれる。ラグナロクの体に、またノイズが走る。まるで泣きわめく子供の様にして、ラグナロクから光の帯が四方八方に放たれる。が、狙いさえ定まっていない力に、当たる訳も無い。
「さぁて、一気にブチかますぜ!?」
言うが早いか、将也が飛び出す。炎が彼の周りに渦巻き、そして漆黒の影がゆらりと現れる。
「行くぜルシフェル!」
刹那にしてラグナロクのデータの全てが将也の空間と直結される、そして、全ての空間から一撃を放つ。塵一つ残さないように、と。
「絶天!」
バキャン、とガラスが割れるような音と共に幾千の空間から幾千の斬撃が放たれ、そしてラグナロクが呻く。
「さて、行くわよ総司!」
「何で面白いように使われてるんでしょうね、僕は?」
総司と麗華が飛び出す。二人の背後にはソゥハイトが浮かび、そして総司の刀からは蒼い光が立ち上っている。
「余り僕は戦闘には向いてないのですが……!」
蒼い猫が、総司の後ろでニタリと笑う。それはあまりにも怪しく、そして見た物に恐怖さえ与える笑い。
「蒼円洸!」
蒼い猫の笑い声と共に、蒼穹の様な色をした光が、二つの刀と共に一閃される。バコン、と蒼い穴が空き、ラグナロクが鳴く。
「あらあら、そんなのでバテちゃだめよ?」
続いて麗華が、メフィストを使い空間を歪める。歪んだ空間は、中から恐ろしい物でも現れそうな程深く、暗い闇。
「無魂!」
グチャリ、と。嫌な音と共に、ラグナロクの一部は漆黒の中へと引きずり込まれていく。引きずり込まれる其処から、恐らく元は人間であっただろう、電霊達の絶叫が聞こえる。
「相変わらずグロいな……」
言いながら凌が飛び出し、続けて震電も跳ぶ。
「気づいてるか? 凌」
「流石に其処まで馬鹿じゃねぇぜ、俺は?」
先ほどから、ラグナロクに一撃を与えた者達が忽然と姿を消している。それはつまり、彼らの役目がそれで終了したと言うこと。
「さて、どうなるんだかねぇ」
「まぁ、考えていてもどうにもならないがな」
バチバチ、と震電の持つ雷帝に雷が迸る。漆黒の暗闇がその光によって照らされる。
「運命ってのは、テメェの力で切り開くらしいし、ね」
雷神の鎚が、唸りを上げてラグナロクにたたき込まれようとする。
「トール・ハンマァァァァァァァァ!!」
ラグナロクに、ぽっかりと穴が空き、そしてその中に凌が飛び込む。次の瞬間にラグナロクの外壁が修復されるが、狼の様な遠吠えと共にそれは再び突き破られる。
「來終焉!」
ラグナロク内部から裂けるようにして蒼い炎が零れ、そして凌の姿は消えている。
「行くぞ義和!」
「言われずとも!」
二人のソゥハイトが同時に覚醒し、そして一撃を放つ。その二つの攻撃は一つの光となって、ラグナロクへと向かう。
「劫焔!」
宏邦の叫びと共に、光は槍と化し、
「堕流星!」
義和の叫びと共に、光の槍はラグナロクへ深々と突き刺さる。刺さった其処から、周囲に鎖が伸び、ラグナロクは漆黒の闇へと固定される。
「#$〜〜$|”|#〜$――!!」
聞こえない絶叫と共にラグナロクが雄叫びを上げる。次の瞬間には、そのラグナロクの目の前に卓斗が立つ。
「楓……、俺に力をくれ!」
その後ろに、唯一人の妹を背負いながら。
「紅鬼のっっ、」
大剣に紅い光が宿る。そしてそれは、紅の一閃として、ラグナロクへと向かい、放たれようとする。
「掌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ズガン、と鈍い音と共に、その紅い一閃はラグナロクを引き裂いた。一瞬にしてそれは修復されるが、特に問題は無い。
「俺が……終わらせるからな」
和途が、幻萼を構える。その目の前には、全員が、その一撃で創った、光の道がある。
前へ/戻る/次へ