第二十八話 ぼくの、ゆめ


 世界が崩壊しようが電霊が幾ら蔓延ろうが、お構いなしに太陽は世界を照らしていた。……まぁ、ジャンゴにとってはこの上ないほど好都合なのだが。
「全く、都合の良い」
 双対銃を振り回し、そして正確に電霊達を撃ち抜く。紅と黒の閃光が電霊達を焼き尽くし、そして太陽と暗黒によって浄化する。
 と、
(……?)
 ふいに何かを感じ取ったジャンゴが、双対銃をホルダーにしまう。そして、右腕を空に向かって掲げ、そして振り下ろす。それと同時に、何もなかった空間からジャンゴの手に神剣グラムが握られる。
 振り下ろし、そしてソレが地面に当たった瞬間、周囲の電霊達がまた吹き飛ぶ。その光景を視界の端に入れながら、ジャンゴはグラムを地面に突き刺す。
(展開しろ)
 グラムを中心として、パイルドライバーの紋章が辺りを這いずり回るようにして広がってゆく。広がった紋章の中に入った電霊達が跡形もなく消し去られ、そして完全にパイルドライバーが展開された時、其処を結界とするかのようにして、電霊達はジャンゴから距離を取っていた。
「さて、と」
 もう一度双対銃をホルダーから抜き、そしてその両の銃口を空へと向ける。空に見える雲の、更にその先を射抜くかのようにして、銃撃は放たれる。
 巨大な銃撃が空に触れた瞬間、それは裂けるようにして開いた。


 其処から姿を現したのは、漆黒の両翼を持つ少年と、純白の両翼を持つ少年。


「お、ああああぁぁぁ!」
 天使の影をその背に背負った和途が、目の前に居る自分へと突っ込む。短剣には罅が入り、恐らくこれが最後の一撃となるであろう。
 狂ったように笑いながら、そして春日和途はその一撃を砕き、その先にいる自分の創った自分を殺そうとする。
 その手に持った透明な大剣によって。
「行くぞ!」
 叫ぶと同時に、春日和途の背から、漆黒の両翼が展開される。髪は銀に、そして瞳は紅銀の光を灯す。
 透明な大剣が佐上和途を一閃にて切り捨てるべく、高々と掲げられ、そしてそれは聖剣の如く偉大に輝き、そして時を待つ。
(短剣に、込めろ)
 イメージする。自分が、アイツを、殺すイメージ。その先も、そしてその過程も必要では無い。必要なのは、アイツを殺す、その結果、ただ一つ。そしてそのイメージの全てを短剣に込め、放つ。
「虚無を」
 ボソリと、和途が呟く。その眼は黒く、そしてただひたすらに、目の前に居るソレを射抜くかのようにして見つめるだけ。
「幻想を」
 更に加速する。天と地がひっくり返り、空が裂け、世界が変わる。その事にすら気づかず、和途はただ、その手に握った短剣を、構える。
「踏み越えて」
 その様を見ながら、春日和途は笑う。大剣が黒く光り始め、そして佐上和途の全てを食らいつくしソレを自分の物にせんと。
「神を殺し」
 漆黒の両翼の向こう側にいる黒い巨大な影が吼える。その強大な圧力が、和途を吹き飛ばそうとする。が、その全ては和途の目の前で、消し飛ぶ。
 その様さえも視界に捉えず、和途は短剣を、更に強く握り込む。
「鬼を砕く」
 神の使いを殺したその短剣を、その力をその手に握り、鬼を砕こうと、その剣を、構える。
 その純白の両翼の更に後ろに背負ったただ一人の少女が、自分を支えている、それで、全てが、どうとでもなる。本気で、そう思っている。
「全ての終焉を」
 何故かって、俺の幻想は、この子と共に在ることなのだから。
「討ち崩せ!」
 短剣を構え、そして神を殺し鬼を砕く、万物のルールを踏み越えるその力の全てを、目の前のソレを一閃の元に切り捨てるそのイメージを、ぶち込む――!
「終焉」
 にやり、と春日和途が笑う。その笑みはまるで、それを砕いて自分は進む、そう高らかに歌い上げるかのような笑みであって。
「崩閃!」
「幻越!」


 幻想を渉る一撃と、終焉を討ち崩す一閃が、交差する。


 ジャンゴが展開していたパイルドライバーの上空で、白と黒の光が炸裂する。周りに飛んだその力だけで、幾体もの電霊達が消し飛ぶ。
 光が収束し、そして廃れた世界に霧散する。そして純白の天使がパイルドライバーの中心に降り立ち、其処に在った神剣、グラムを握る。


「……、勝ったぜ、ミーシア」
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