幕間 貴方を失くす以外、何も恐く無いのよ
大事な友達が、其処に居た。
そしてある日、僕は病気になった。もう治らない、お医者さんはそう言った。だけど、僕の友達は、それを信じずに、毎日お見舞いに来てくれた。
いや、彼だってきっと解ってたんだろう。それはそうだ、専門の人がそう言ってるんだから。
だけど、彼は毎日、僕に笑いかけに来てくれた。毎日、いつも学校でしていたようなくだらない話をして。
毎日、一緒に笑って。
そんなある日だった。
僕の容態は悪化した。悪化した、と言っても特に外見的には何も変わってはいない。世界に僕と同じ病気を持った人は居ないそうだ。
つまり、未知の病。誰も治し方も、そしてこれがどんな病気なのかも解らない。
だから、僕の中で何かが変わっても、誰も気づきはしなかった。変化が現れなかったから。それを気づいたのは、僕だけだった。
そして更に数日後。
いつも来る彼が、今日は来なかった。
あぁ、もう彼も、僕のことをどうでも良いと思ってしまったんだ、と感じた。
ただ用事が在っただけかも知れないのに、僕はそう思ってしまった。
そう、今まで来てくれた事こそが奇跡のような物だったのだ。なのに、僕はそう思った。
そして、
僕はバケモノへと変貌を遂げてゆく事になった。
最初に、手の爪が異常に伸びた。八重歯が、牙のように伸びてゆく。苦しみに悶えながら横を向くと、鏡に映った僕の眼は、真っ赤に染まっていた。
それはまるで、
吸血鬼のように。
バン、と扉が開け放たれる音が聞こえた。叫び声が聞こえる。それはそうだ、こんなバケモノを見て、逃げない人間なんているわけがない。
なのに、何故?
何故君は、僕の名前を叫んでいるんだ?
彼は、来てくれた。でも、僕がバケモノに変貌していくそれは止められない。僕の名前を呼び続ける彼の向こう側に、何かが見えた。
僕が望むと、それは僕の手元にやってくる。銀色の、十字架。ただ、一方だけが、釘のようにして尖っている。
それを僕は彼に渡した。僕の心臓を貫け、と。
彼はそれを拒んだ。自分の手で友達を殺したくなんか無い、と。
バケモノになった僕を友達と言ってくれた彼と、もっと一緒に居たかった。でも、それは敵わない物なのだろう。
僕は言った。
僕を思うのなら、僕を殺してくれと。僕が僕で在る間に、と。
そして、泣きながら彼は銀色の十字架を構える。そして僕の上に馬乗りになると、泣きながらこういった。
「……章人……っっ!」
僕が僕であったときの名前を言いながら、彼は僕を貫いた。
最期に彼に呟いた言葉が伝わったかどうかは解らないけど、
僕の意識は途切れた。
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