第十七話 裁け我が罪


「舞紫電!」
 卓斗の真横に魔法陣が出現し、それを断ち切るように和途が短剣を振るう。すると、その魔法陣の中から紫紺の稲妻が放たれ、短剣を通し卓斗へと牙を剥く。
「巨王!」
 巨大な剣がその一撃と卓斗の間に突き刺さり、そしてその力の一切を遮断する。当たらなければダメージは負わない。ならば、当たらなければ、良いだけ。
「お前が強いのは解ったよ、和途」
「お褒めの言葉、光栄だよ、卓斗」
 だけど、と卓斗が呟いた。そして大剣を構え、和途にその切っ先を向ける。
「お前は俺には勝てない」
 和途が眼を細める。大剣を構え直し、卓斗は続ける。その後ろには、巨大な影。それにも、和途は既視感を憶えた。だが、今目の前に居る晶波卓斗と言う存在は――ただの、敵だ。
 巨大な影はふくれあがり、卓斗の後ろで形を成す。そして、その姿を、和途は知っていた。――晶波楓。
 力が炸裂し、物の見事に和途は吹き飛ばされる。そして世界樹の壁に叩き付けられ、目の前を向けば、其処には、晶波楓の姿を背負った、晶波卓斗。
「紅鬼……!」
(……ソゥハイト、ねぇ)
 破滅の一閃で、和途の体は、卓斗の右腕によって貫かれていた。それに対して、一瞬たりとも、和途は怯えを見せなかった。まるで、其処に自分が居ないかのように。
「掌ァァァ!」
 炸裂した衝撃が和途を下へと叩き落とす。世界樹の根を突き抜け、更に下へと落ちていく。叩き付けられた先で和途が視たその先に見えたのは、
 一つの扉。
「−−−……?」
 呟いた瞬間、その扉はゆらりと揺らめくように消えてゆく。消えながら開いていくその扉の奥に見えたのは、
「……**……」
 揺らいで消えてゆくその幻想は、小さく笑っていた。一瞬何かを思い出しかけた瞬間、上からの殺気に気づく。戻した視線の先には、卓斗。
「やっぱり。お前なら、生きてると思った」
 卓斗は言った。そして、遙か上から、和途を見下ろしながら、最後の一言を、和途に向かって放る。
「こっちに、来い」
「……悪いな、無理だよ、卓斗」
 そうか、と悲しそうな表情を浮かべ、卓斗は呟いた。そして、その表情は、全てを切り裂く悪魔の如き笑いへと姿を変えてゆく。
 卓斗がふらりとバランスを崩したかのように落下を始める。そして、その手に持たれた大剣は、確実に和途を射止めようと切っ先を向けている。
 その大剣をぼんやりと眺めながら、和途は何かを呟き始める。
「ソゥハイト……」
 ぼそりと卓斗は言う。その眼は細まり、和途の心の臓を狙い、ただそれだけを見ている。だが、卓斗には視えた。和途の全てを囲うように集い始める影のような黒い力を。
「**」
 呟いた瞬間、世界樹が弾けるように光り出し、そしてそれに伴うようにして和途が光る。卓斗の振り下ろした一閃は止められた。
 機械仕掛けの、漆黒の翼によって。
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