第十六話 やがて世界は死に絶える


「鬼掌!」
「努炎!」
 地を這う衝撃波と爆炎の衝撃波がぶつかり合い、相殺する。ぶつかった瞬間に和途の努炎は炸裂し、互いの視界を遮る。が、思考の隙さえも相手に与えず、互いが互い、その炸裂した炎の中へと飛び込む。
 煙に一切が閉ざされた視界の中で、技を放つ前に相手が存在した方向へと飛んでゆく。そして、卓斗も同じようにこちらに来ると、和途は確信していた。
 俺の知らない俺が言っている、あいつはこっちに来ると――。
 巨大な剣が視界を切り開き、そして短剣とぶつかり合う。短剣は手数に関しては長けてはいるが、このような巨大な剣とのぶつかり合いとなると、矢張り威力では劣る。故に、そのまま巨大な剣の一閃に流される。
(けども)
 短剣と共に力の流れから避ける。巨大な剣は地面にそのまま叩き付けられ、大きな隙が卓斗には出来ているはず。
 それを確信し、卓斗が居るであろう場所へと和途が跳んだ。そしてその先には、
「引っかかったな」
 先ほどとは違う剣を――シュヴルツを持った卓斗が、居た。
(……さっきの剣は何だ――!?)
 思った瞬間、大剣が空を薙ぎながら和途へと突き進んでくる。咄嗟に短剣を大剣の進路に構えるが、ほとんど意味は成されない。
「っが!」
 声と共に和途は吹き飛ばされ、世界樹の壁へと激突した。そしてすぐさま飛び上がり、もう一度襲い来る大剣を避ける。
(……致命傷は免れた、か)
 短剣によって、一応致命傷は免れた。が、受けたダメージは相当に大きい。それにしても、先ほどの巨大な剣がダミーで在ることに気づかなかった自分が情けない、と軽く、一つ、ため息を吐く。
「道仔」
 突然卓斗がそう呟いた。和途が頭部に疑問符を浮かべながら立ち上がる。だが、此処で短剣を振りかざす事も無く、ただ、油断だけせずに卓斗を見る。
「氣を自在に操る能力。さっきの剣も――巨王も、同じだ」
 なるほどね、と言いながら和途がもう一度短剣を構える。
「で、ソレを俺に教えて何にする、って言うんだい? 晶波卓斗」
「俺が知ってたお前なら、そこでぬけぬけと自分の能力を話したからだよ、『春日和途』」
 和途が吹き出す。続いて、卓斗も。互いに自分を嘲笑うかの様に笑った後、和途がその言葉に答えた。
「オーケーオーケー、教えてやるよ。ただ、その前に一つ修正だ」
 短剣の柄に刻まれた文字を示すかのように卓斗に突きつけ、和途は言った。
「俺は春日和途じゃない、佐上和途だ」


「おやおや、女性と戦うのは趣味じゃ無いんだけどな」
 言ったのは真那。そしてその正面に居るのは、黒西麗華。
「相変わらずで何よりだわ」
言いながら取り出した刀は、荒々しく光り、そしてその光りと同じような感覚を、麗華自身から受ける。
(魔力の供給システムみたいなモンだっけか……?)
 解釈が多少違うかも知れないが、そんな事には何ら問題は存在しはしない。今現在、真那と麗華、この二人に存在する問題はただ一つ、
 勝つか負けるか。
 二人が同時に何かを喋り出す。それと共に、両者の後ろから湧き出る、それぞれに似た、それぞれの、力。
 邪悪としか表現できないような、そんな笑みを浮かべたまま、両者は刃を構える。それはもう収める事など出来ぬ、破壊の一閃の為だけの刃。
 そして二人の後ろに居た影は、完全に彼らと同化し、そして彼らは、刃を振るう。
「ユグドラシル!」
「メフィスト!」


「俺の能力は、『掟に抗う』力だ」
 短剣を卓斗に向けたまま、和途が呟くように話し出す。あくまでその姿に油断は無く、いつでも斬りかかれる姿勢である。
「ルールを勝手にぶち破る力。ただ、その分、世界から与えられる罰も、在る」
「解った、それで充分だ」
 邪悪な笑み。戦う者にしか解らないであろう快楽の笑み。刃は収められる事も無く振るわれる。振るった剣と剣が激突し、そして弾き合う。そしてまた、
 惹かれるように交差して。
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