第十四話 狂い空


「……って事が在ったんだが」

「また電霊を狩ってきたのか。ほどほどにしておけと言っているだろう」  椅子に座りながら茶を飲んでいる和途に言葉を発している男は、山城震電。現実主義者で、とてつもなく冷静な戦術家で在る。勿論、悠斗の知り合いな為(という表現はおかしいかも知れないが)、彼自身の実力もとんでもない物である。
「依頼でも無いのに狩っても金にならないのに、お前も良くやるな」
 机を挟んで和途の反対側に座っている男は、如月真那。常におちゃらけた調子だが、やるときには中々やる奴だ。……ひっくり返せば、やらなくて良い時にはとことん何もやらないのだが。
 ちなみに、『全てを知っている』彼も強いと言えば強いが、今までに悠斗と戦って、勝った事は無いそうだ(後に聞いた話だが、前に悠斗に聞いた魔力の話の中に出た少年というのは真那の事だった)。
「それにしても、『神殺し』とは相当な物を名乗ったモンだねぇ」
 言ったのは有川将也。茶と美人に目のない、自他共に認める変態。仕事中に発した『女性は全員救出。他? 知らん』という言葉はあまりに有名。
 そんな真那以上のはっちゃけっ振りを発揮してくれる彼だが、此処に居ると言うことから皆さんも推測できるであろう通り、とてつもない実力者である。こう見えても元は天使であり、現在は天から堕ちた堕天使という事となる。
 と、幾度と無く平行する世界を戦い抜いて来た彼らと、途中脱落した、普通の少年と化している、佐上和途。
 という状態だったのだが、この二年間で(『元々』のおかげも在るだろうが)訳のわからない程に成長を遂げた和途はしばしば電霊狩りを行っていた。
 ただ、仕事も回ってこない未熟者なので、ただの趣味のような物、金が貰える訳でも無し、感謝される訳でも無し。間接的に人を救う状況になったとしても、貢ぎ物のように物を置いて逃げるか、先ほど会った女性のような眼をされるかのどちらかだ。
「別に? 良いじゃないか、俺には実際『神殺し』は備わって居るんだし」
 和途は茶を飲みながらそう答えた。和途の持つ短剣、その柄には『神殺』の二文字が刻まれていた。と言っても、これは和途が刻んだ文字であり、特に意味はない。
 今和途の使用している短剣は、悠斗が二年前に和途にやった物である。ただ、和途が『神殺し』を発動させた際に、短剣にその二文字が残った、という事だ。故に和途は、自身の能力を『神殺し』と名付けた。
「ペルソナも持たないのに、ソレが意味のある物になるとは到底思えないがな」
 言いながら入ってきたのは世刻悠斗。手に持っているのは袋。その中には、恐らく、金。
「ん、お仕事ごくろーさん」
 言いながら真那が悠斗に茶を出す。悠斗はそれを手に取り、金の入った袋を震電に投げて寄越す。この中で他の人間に金を渡せば、本来一生遊んで暮らせる金でも容易に使い切ってしまう。
(それにしても)
 何で原子配列変換で金を量産しないのだろうか、と和途は思ったが、そこら辺は誰もツッコんではならない領域らしい。
 と、話が大分逸れたが、今現在此処に居るのが、世刻悠斗の経営するギルド『パーソナル』のメンバーである。……無論、ギルド名の由来は皆さんご想像の通り。
 無敵軍団と陰では言われていたりする(悠斗はこの呼ばれ方は余り好きそうでは無かった)が、此処に若干一名発展途上というか半人前というか……ようするに役立たずが一人いる。そして、その役立たずが、佐上和途。
 神殺しの能力も、まず自身がまともに動けるようでなければ使えはしない。基礎能力の前に技術だけが在ってもなんら意味はない。
「で、−−−は?」
 和途がそう言った。この二年間で、和途も−−−の存在を確かに知り、そして、その記憶に焼き付けた。故に、意味は理解出来る。
 悠斗の目的は仕事の達成だが、あくまでそれはオマケのような物で、実際の目的は、−−−の情報である。
「相変わらずだ。***は水面下で動いているようだがな」
「***、ねぇ。話だけなら聞いたが、会った事は無いんだよねぇ」
 ポツリと漏らすように和途が呟いた。他の人間は会った事が在るらしいが、和途だけが、***という人物に会った事が無い。まぁ、コイツ等が会っていて俺が会っていない人物など他にも山ほどいるのだろうが、と脳内で続けた後、一息吐いた。
「……空が……紅いな」
 真那の呟きが、紅い空へと消えていった。
前へ/戻る/次へ