第四話


 さて、更に数日後。再び真那に薪を拾いにこさせられている和途。ミーシアは……。


 ――なぁ、そんな食うんだったら自分で作ったらどうよ?
 ――え、だってあたし料理出来ませんし。
 ――料理作れないのが真那様の萌えポイントだと思うなぁぁぁぁー!
 ――あぶ、あぶなっ!?
 ――ぐはっ!? 真那、何故有りもしなかったちゃぶ台が俺の方に!?
 ――黙れ和途、これからこの子は料理の特訓だ!
 ――何ですかその展開!?
 ――君も黙ってて! はい和途、薪拾ってこい!
 ――んな理不尽な!? って炎危ない、嘆唄展開するな馬鹿、行ってきます!


 ……という事で、特訓中である。それにしても……。料理に何かトラウマでも在るのだろうか、真那の奴……?
 思いながら薪を適当に集める。確かこの間集めたので一ヶ月は保つ筈なのだが……。たぶん、大量に持って帰ると「何お前、そんな持って帰ってきてどうしたの?」とか真那に言われることは回避不可能だろうな、などと考える。
 そしてたぶん、家に帰れば、お約束の炭化した謎の物質の毒味タイムが待っているのだろう。それぐらい俺には解るのです、うふふふふ、と不気味に笑いながら薪を振り回す。
 先ほど言った通り、集めても大した意味はない、適当に時間をつぶしてから適当な量の薪を持って帰れば任務終了で在ります大佐。
 とかそんな事を考えていると、後ろに気配。
(……今日はミーシアの奴居ないのにな)
 一瞬そんな事を考えるが直ぐさま打ち消す。確かに、ミーシアと行動を共にするとレッサーデーモン等の悪魔の類が多く出現したが、別行動を取っても自分にソレがくる可能性が存在しない訳ではない。
 腰の後ろのホルダーに収められた短剣を手に収め、周囲に気を配る。がさがさ、っと音がした瞬間、そこを見る、が、背後から何かが飛び出す。
 それと距離を開きそれを見る。そこにいたのは、見たこともない男性。
「あぁ、驚かせてしまってすまない」
 言いながら男は掌を向けた。和途が微動だにしない内にその掌から稲妻が放たれる。そしてそれは、和途の背後に居た何かを焼いた。
「どうも」
 和途は一言だけ礼を言うと、ホルダーに短剣をしまう。と言っても警戒心は解きはしない。異質は感じない、だがこの男、此処に辿り着く時点でかなりの手練れで在ることは予想がつく。


 薪を地面に転がし、そしてその上に座る。それだけの簡素な席(とはとても言えないが)に二人は座った。
「女の子を捜しているんだが」
 ぽつり、と男が言った。その瞬間、隠されていたのか、男の中の異質、そして殺気がぐらぐらと煮立つようにして湧き出る。
「知らないかい? この辺に、彼女以外に女の子は来はしないと思うから、見れば解ると思うけど」
「悪いけど知らないね。俺も余り外には出ないし」
 咄嗟に嘘を吐く。引き渡せば楽かも知れないが、引き渡さず、悟らせない方がもっと楽では無いか、という思想。
 それに、傷つけたら将也に怒られるしね、という言い訳が脳内に浮かぶ。……言い訳? と考え込むが、結局良く解らないので放置しておく。
「そうか……。じゃぁ、見かけたら言っておいてくれ」
 言いながら男は席を立った。既に殺気も異質も、元の通りに消えている。和途が言葉を続けるよう無言で促すと、背を向け、去りながら男は言った。
「君の友人が君を探している、ってね」


「……って事が在ったんだが」
「お前その台詞好きね」
 言った瞬間に真那の言葉が飛ぶ。特に言った憶えは無いのだが……? まぁいいや、と適当に脳内で解決させる。
 ミーシアは既に就寝、居るのは和途と真那、そして将也だけ。震電はとっくに就寝。寝るの早いのです、あの人。自室で何か作ってる、って噂も在るけれど。
「ま、そういう状況でヒロインを護るのはお前の仕事、頑張れ」
 あくまで傷つけたらお仕置きですわよ、などと言いながら将也も自室へと向かう。寝るつもり満々である。それに続いて真那も席を立つ。
「和途、言っておくが」
 いつになく真面目な真那の眼。何か不吉な予感さえ感じさせるそれ、和途が真面目な表情になると、真那は言った。
「机の上のその炭、お前の分だから」
 ……あぁ、そっちですか、と和途は項垂れた。炭? 食べましたよ? 何故か目を覚ましたミーシアがこっちを見てたから。


 どうにかこうにか食い終わって(食った後はまぁ、ご想像にお任せ)ようやく寝ようかと自分の部屋に入る。と、机(は没収されませんでした)の上に手紙が置かれていた。真那からの物である。いつになく気持ち悪い。
 中を開くと、そこには一つだけ書かれていた。
『覚悟を持て』
(……何の、だ)
 手紙を眺めながら床に転がる。そこら辺に放っておいた毛布をたぐり寄せ、天井の方を向きながら、その事を考え続けた。そしてその答えは見つからないまま和途の意識は途切れ、そして。


 刻は、来てしまう。
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