第二話


「あれ、どうした和途、誘拐か?」
「ねーよ」
 入った瞬間真那に何か言われたが特に気にも留めず、そのまま少女を自分の部屋に押し込む。空き部屋は大量に在ったが、使うのは震電の許可が下りてからだ。
 とりあえずベッドの上辺りに放った後、自分は飯でも食おうかと部屋を出る。基本的に此処は自炊である。自力で何とかしましょう。
 で、飯をようやく食べ終えたが、未だ震電は帰ってこない。悠斗が戻ってこないのはいつもの事だが。将也? 街に行って何かやってるだろう、きっと、たぶん。
 真那に確認を取ると、矢張り震電は依頼で出かけたらしい。比較的難易度が高めな為、しばらく帰ってこないそうだ。
 仕方がないので自分の部屋に戻る。寝台の上では、未だ少女が死んだように寝ていた。それを横目で見た後、自分の部屋に置かれた机へと近より、座る。そして短剣を取り出し、眺める。刃がアンバランスなほど長いそのナイフは、かれこれ一年近く使ってきただろうか。
 と言っても、斬った物なんて普通のグールやさっき出たレッサーデーモンの様な物だが。この辺には、基本的にその程度の存在しかでない。
 電霊が出たとしても俺には狩れないし、狩れたとしても狩る理由も特に見あたらない。と、そんな状況のはずなのに。
(……なんだったんだ、あれは)
 視線を横に移すと、未だ自分の寝床には少女が横たわっている。先ほどこの少女を住処に上げる(という表現は違うかも知れない)時に感じた、大量の異質。少なくともグールやレッサーデーモンではないし、ましてや電霊でも無かった。
 強いて言うなら、それは影。陰鬱な、何者にも囚われることの無い、影。
「なーにやってるんだ?」
「のわたぁ!」
 いつの間にやら将也が真後ろにいた。とてつもないびっくり振り。将也は街に居るんじゃ……? と思ったが、思想を巡らせた瞬間、自分の勝手な考えか、と思いだす。
 じー、と将也の視線がずれて行く。ずれたその先には、和途のベッドの上に転がっている、寝たままの少女。
「……誘拐?」
「ねーってば」
 そんなに俺は信用が無いのかとため息を吐いた。


 ……それにしても。
「ごちそうさまでしたー!」
 ……それに……しても。
「ねぇ和途君!? このオニャノコーはどうしてこんなに食べるのかな!?」
 小声で真那が和途に語りかける。ちなみに、この飯は全て真那が作った物である。彼の食事中に彼女の目が覚めたため、真那が作る羽目となった訳だ。
「いや、うん、俺も……知らん」
 何はともあれ、目を覚ました少女は、とてつもない量の夕食(と言っても既に夜食と言える時間帯だが)を平らげていた。
 ……女の子って……怖い?
「何で疑問符なんだよ」
 将也が自室で呟いたが、その呟きを聞いた物は居なかった。……ナレーション以外。
 何はともあれ、少女はしばらくこの住処に泊まる事になった。……無論、食費はすばらしい額に到達するで在ろう事は、三人が三人、重々承知だった。
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