第一話
「……なんだこりゃ」
呟いた和途の目の前に落ちていたのは、一人の少女。ただ、その背中には奇妙な翼が生えている。その姿だけを見て、端的に、一言で表せば、
天使。
そして、目の前に居る天使に対して和途が取った行動は、逃走。
(厄介事は余り好きではありませんの事よ)
脳内で適当な言い訳(と言っても実際思ってる事だから言い訳とは言わないかも知れない)を呟きながらすたすたと歩き去ろうとする。
と、
「……面倒なのは、嫌いなんだってば」
少女の後ろに現れたのは、悪魔。といっても下級悪魔――レッサーデーモンである。電霊でも無し。ならば――
(俺でも斬れる、か)
ペルソナを持たない和途にとって、電霊というのはこの上ない程の強敵だが、如何せん周りに居る存在が人外の強さ、『斬れる』物なら基本的に彼に敵は存在しはしない。
――あくまでも『基本的に』だが。
常識を逸した異端の存在と戦うならば、彼は間違いなく敗北を喫するだろう。何故かって、弱いから。
「努炎」
言いながら振った剣から、爆炎の衝撃波が飛ぶ。短剣というリーチの短い獲物から放たれた衝撃波は、それと同じように小さい。だが、
《ぐ、ぎゃ!?》
(俺程度の実力でも、下級悪魔程度になら余裕で勝てる)
《くぎぎぎぎぎぎぎぎー!》
レッサーデーモンの雄叫びと共に、似たような存在が和途と少女を囲むように出現する。どこからどうみても多勢に無勢。
(あー、これはちとキツいかも……?)
《くぎゃ!》
リーダー格らしきレッサーデーモンの号令と共に、周りにいたソレ達が、和途に向かって飛びかかる。
(……ちっ)
「如月流魔術」
少女をこちらに引き寄せながらそう呟く。それと同時に、炎の魔法陣が周囲に展開される。ただ、ところどころ呪文が切れていたりと、本来のその魔術の所有者が持つソレよりは大分劣るであろう見た目である。
何はともあれ、一応は発動できる状態にまで到達したその魔法陣は、
「嘆唄」
紅蓮を吐き出し、そしてその紅蓮の炎はレッサーデーモンの集団を飲み込んでいくかのように火達磨にした。
燃えながら足掻くレッサーデーモン達は、まるで踊っているかのように果てていった。
「……はぁ」
言いながら少女を地面に降ろそうとして……やめた。周囲から感じられる、異質。少女が目を覚まして自力で去ればそれで良いと思ったが、どうもそうとはいけないらしい。それにしても、此処に何かあるとは全く思えないのだが……。
(これだけ魔物が来るって、何か在ります、って言ってるようなモンだな)
心中呟きながら、少女を見、そして自分の住処を見、そちらへと向かった。
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