第七話


「くぅっ!?」
 伯爵が右手を一薙ぎしただけで、剣ごとラセルトは弾き飛ばされた。
 肩から落ちてそのまま二転三転したところへ、更に伯爵は飛びかかる。
「ぬぅんっ!」
 振り下ろされる左手を視界の端に収めた瞬間、そのままラセルトは横へと転がった。
 伯爵の左手は遺跡の床を容易に叩き割り、転がっている無防備な背中をその破片が叩く。
 こちらへと伯爵が向き直る前に剣を持っていない左手をバネに立ち上がる。
「奴の速さに翻弄されるな、飛び込め!」
 おてんこ様の指示と同時にラセルトは身を低くして飛び込む。
 体勢を立て直した伯爵へと逆袈裟に斬りかかるが、
「遅いッ」
 左手の爪がそれを受け止める。
 が、その伯爵の眼前に太陽銃が煌めく。
「ぬ、」
「いっけぇ!」
 剣を右手で押さえたまま、左手で太陽銃のトリガーを引く。
 零距離で放たれた閃光が辺りを照らし、ラセルトの視界も一瞬奪われる。
 剣から伯爵の束縛が無くなったと同時に、地を蹴って後ろへ下がる。
 アンデットに太陽銃を当てたときと同じなのか、黒い霧が上がり、その中から伯爵がのそりと現れる。
「今の一撃はなかなか危なかった」
 心底楽しそうに伯爵が言うと同時、彼の周りに四本の剣が現れ、回り始める。
「く、……近づけないか」
 ラセルトが呟き、
「それでも奴が攻撃するときには隙が出来るはずだ。其処を狙うしかあるまい」
 おてんこ様が答える。
 一度太陽銃をホルダーにしまい、グラディウスを両手で構える。
 次の瞬間に四本の剣の内一本が飛来する。それを横へ弾いたところに二本目。
「こ、っの!」
 剣を振り下ろし、床に叩きつける。真っ二つになった後、剣は消えていった。
 三本目が来るかとラセルトが伯爵に目線を向け、
「甘いぞ、太陽仔」
「ラセルト、後ろだ!」
 慌てて横に飛ぶと、肩を先ほど弾いた剣が掠めた。おてんこ様の言葉がもう少し遅ければ後ろから頭を刺されていただろう。
 ホルダーから太陽銃を抜き放ち伯爵の元へ戻っていく剣へ二、三発撃つ。
 横へ弾かれたかと思うとそれも消えていった。
 彼の周りに残った二つの剣を伯爵は手に取り、構える。
「ふんっ!」
 地を蹴り、こちらへと駆ける。
「うおお!」
 ホルダーに太陽銃をしまい、剣を構えてラセルトも駆け出す。
 伯爵の左手に握られた剣が横に薙ぐ。床を蹴り跳躍し、それを避ける。
 それを視界に収めた伯爵はそのまま左手の剣を放り出し、右手に持っていた剣を両手で支え、空中で身動きの取れないラセルトへ切り上げる。
「貰った!」
「さ、せるかあああ!!」
 ラセルトが取れる行動は迎え撃つという事のみ。
 果たして伯爵の一撃と正面から向かい合って勝てるのかという恐怖はあるが、しかし他に取れる選択肢はない。
 と、
「太陽おおおおお!」
 おてんこ様の声と共に、遺跡の真上から太陽が照らし出す。
 伯爵の身から黒煙が立ち上り、そしてラセルトの剣が金色の光を帯びる。
 ソル属性をエンチャントされたグラディウスは伯爵の剣と交差し鬩ぎ合う。
 ガチン、と金属と金属がぶつかりあう音がした直後、伯爵の剣は両断され、グラディウスはそのまま伯爵を袈裟に切り裂いた。
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