第六話
「今一度浄化してみせよう、伯爵!」
おてんこ様の声と共に、ラセルトは懐からグラディウスを抜き、構える。
しかしそれを見ても伯爵は全く動かない。どう動こうかラセルトが悩んでいると、
「剣を納めろ。貴様と話がしたい」
そう伯爵は言うが、ラセルトは構えたままだ。
剣を納めた途端に飛びかかってこられれば、こちらの不利は明らかなのだから。
「ふむ、正しい判断だ」
楽しそうに表情を変えてから、
「太陽の使者。私が決闘を好むのは貴様も知っているだろう」
伯爵がそう言うと、おてんこ様は無言でラセルトに剣を納めるよう伝えた。
渋々とラセルトは剣を納める。
「さて、奴の息子よ。貴様は何故、貴様の片割れが我らの所に居るのか、知っているか?」
片割れ……?
と頭に疑問符を浮かべた次の瞬間、リュアールの事だと気づく。
確かに自分と彼は二人で一人なのかも知れない。ジャンゴとサバタが支え合ったように。
「貴様の片割れ。奴こそが、銀河意志、ダークがこの世に顕現する為の器」
「リュアール、が……!?」
銀河意志ダーク。
父が、叔父が、生涯を賭して戦い続けた、ヒトを滅ぼそうとする絶対意志。
アンデットを生み出したものであり、ヒトが敵うはずも無い物。
「待て、今までダークはこの地上に現れなかった……いや、現れる事が出来なかったハズだ!」
おてんこ様が叫ぶ。
その通りだ。
だからこそ、アンデットによる生と死の輪廻への介入などという回りくどい事をしているのだから。
「言っただろう? 奴は器。自らの膨大な力を納めることが出来るだけの器が無く外から干渉していたダークは、遂に見つけたのだよ」
リュアールという、地上に現れるため、自分の全てを納める事が出来る存在。
「そして私は。言うなれば、あの器がダークになるまでの捨て駒」
「馬鹿、な!? アンタ、自分で解っててそんな……!」
自らをただの時間稼ぎと言う伯爵に、ラセルトは疑問を抱く。
自分の存在をそんな風に扱われて、何故そんなにあっさりと肯定しているのか。
「私に、私自身の意義など必要ないのだよ、太陽仔」
言いながら、伯爵は漆黒の椅子から立ち上がる。椅子を形成していた蝙蝠が一斉に飛び立ち、何処かへと消え去る。
「剣を抜け。舞踏の時間だ」
最早会話をする気は無いらしい。慌ててラセルトは剣を抜き、構える。
「捨て駒であろうが何であろうが関係など無い」
外套を脱ぎ捨て、伯爵は構える。無防備に垂れ下がった両腕が、今にもこちらを掴み捉えんとしている。
「私には光も闇も要らぬ! 私が求めるのはただ一つ、貴様の血筋との戦いだ!」
爆発するような跳躍する音と共に、伯爵はこちらへ飛ぶ。
「行くぞ、太陽仔!」
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