第二章
第五話
ようやく遺跡にたどり着いた。
ギラギラと日が差し込んでいる其処へ足を踏み入れる。
と、
「うわ!?」
ラセルトの数歩前の地面から唐突に光が舞い上がった。
何かのトラップでも踏んだのかと慌てて下がりながら周りを見る。
「待っていたぞ」
正面から聞こえた声に反応してそちらを向く。と、
「……ひまわりが……浮いてる」
率直な感想を呟いた瞬間、それこそそこらのアンデットよりも早くそれは飛んできて、軽快な音を立ててラセルトの頭がひまわりの葉で叩かれた。
「私は太陽の使者、おてんこだ! 断じてひまわりなどではないっ!」
ラセルトは少しの間頭をさすっていたが、思いついたように
「おてんこ……って、おてんこ様!? 父さんと一緒に戦った!」
「うむ、ようやく気づいたか。この星の危機を感じ取ったソルは、再び私をここへと喚んだ」
つくづくお前達の一家とは縁があるようだ、とおてんこ様は呟く。
「では行こうか。我が友、ジャンゴの息子よ」
「ラセルト、だよ。よろしく、おてんこ様」
彼の性格などはいつかサバタに聞いていたのでさほど驚く事もなく、
簡易的な自己紹介を終えてラセルトとおてんこ様は歩き出した。
「俺が父さんの子供だって知ってるなら、今父さんがどこに居るかは解らないの?」
「私が知る事が出来るのはあくまで一部の出来事のみ。サン・ミゲルで起こった事は知っている」
母さんが死んで、父さんは旅立って。そして数年経ったこの間――。
「……サバタがようやく幸せになったと、彼女も喜んでいたというのに」
浮きながらおてんこ様は俯いた。
それを見てラセルトも少しだけ俯くがすぐに前を向く。
ザジは弱気な自分を見せずに送り出してくれた。なのに自分が凹んでいるわけには行かない。
そうしているうちに、遺跡の最深部へと辿り着いていた。
トラップはいくつかあったが、大抵は風化するなりしてしまっていて、そのまま通る事が出来たのだ。
大きな門がある部屋に出た。取り敢えず一休みしようと座り込んだラセルトにおてんこ様が話しかける。
「ラセルト」
「……うん」
門の向こう側からは強い闇の力が感じ取れた。今まで戦ったアンデットとは比にならないほどの力。
「決して気を緩めるな。……奴め、再び蘇ったか」
どうやらおてんこ様は知っている相手らしい。誰かと聞いてみると、
「伯爵だ。血の伯爵。何度死のうとも蘇る、ヴァンパイア・ロード」
先日サン・ミゲルが襲撃されたとき、リュアールを連れて消えたあの男。
ラセルトが記憶の中から呼び出したその感覚は、確かに門の向こうの力と似ている。
「行こう。向こうも俺たちには気づいてるだろ?」
「ああ」
おてんこ様に一度だけ話しかけ、大地の実を囓りながらラセルトは立ち上がった。
門に両手をかけ押していく。ギギギ、と門が軋む音が聞こえ、開けた先には、
「待っていたぞ。我が好敵手、その息子よ」
ヴァンパイア・ロードが、真っ黒な椅子に座っていた。
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