第四話


 朝日が街を照らす中、ホルダーに太陽銃を収め、壁にかけてあったグラディウスを腰に下げる。
 深紅のマフラーと、スミスに作ってもらった軽鎧を身につける。ヴァンパイアハンターとしての経験が浅いラセルトに矢張りそれは少々重い。
 トントンと足音を立てながら下へと降り、いつもより早い時間に起きたため余り客の居ない下の階をそのまま抜けて外へ出る。
「行くんやな?」
 後ろから声が掛けられる。
「うん」
 一言だけ、答える。
 暗黒転移が作動する直前リュアールは確かにラセルトに向けて言葉を放った。
「俺が居たら、あいつらはまた来る」
 今回だって、サバタという犠牲が出た。サン・ミゲルにだって、相当な被害が出ている。
 もう一度、ラセルトという存在を狙って彼らが来れば、どうなるか解らない。
「なら、こっちから行ってやる」
 サン・ミゲルの外へと繋がる門を見る。
 それは、昔と全く変わりなく、そびえ立っている。
 見送りは、居ない。
 それは、いつもアンデット退治に行くときと同じ。
 全く変わりなく、みんなは待ってくれている。
「みんな、アンタの帰りをいつも通り待っとる。せやから、みーんな終わらせたら、真っ直ぐ帰って来るんやで?」
「……うん」
 何も、特別な事など要らない。
 やれることをやって。やるべきことをやって。
 いつも通り、此処に帰ってくるんだ。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
 ザジが手を振り、それに答える。
 足早に、街を出る。
 其処まで来ると、駆け足になる。
 ザジの眼は、赤かった。恐らくは、一晩中泣き明かしたのだろう。
 もっと、強くなりたい。
 この選択で、俺がどんな戦いに巻き込まれるのか、解らない。
 でも、やりきってみせる。越えてみせる。
 全力で駆ける。気づくと、サン・ミゲルを大きく囲む門の外へ出ていた。
 後ろを振り返ると、遠くに螺旋の塔が見える。
 もう一度向き直り、歩き出す。
 ふぅ、と一度息を吐き、バッグの中を漁る。
 確かザジが占っておいてくれた結果が入っているはずだ。
 バッグから引っ張り出したメモ用紙によると、南の方に数日行った先にある遺跡に行けば何かあるかもしれないそうだ。
 ただ、占いとしては『大きな闇』と出ただけで、実際何が出るかは解らない。
 が、行ってみる価値はあるだろう。何より、他に何があるわけでもない。
「さあ、行くぞ!」
 景気づけに、少しだけ声を張り上げてみた。
 こうして、英雄の息子、ラセルトの戦いが始まる。
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