第十六話


 走り出したラセルトに向かって、闇がこちらへ刃として飛んでくる。
 それをグラムで叩き斬り、そして前へ、進む。
「言ってるじゃんか、何度も! 君が僕に勝てるわけが無いんだよぉぉぉぉ!」
 ダークが吼える。
 大気がびりびりと振動するのが解る。
 それは、怖い。
 とても怖い。
 ラセルトに、この世界は重荷かも知れない。
 勝てないのかも、知れない。
 けれど、
「負けるわけには、いかないんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 雄叫びと共に。
 薄暗くなっていた闇が、照らされる。
「な、……に!?」
 ダークの呟きが明るくなっていく空に響く。
 夜明け!
 それを見てラセルトが飛び込む速度を上げようとして、
 かくん、と膝が折れる。
『ラセルト、これ以上は……!』
 ソル・トランスを使っていた時間が、長すぎた。
 そして今となっては、ダーク・トランスまで同時に展開しているのだ。
 がしりと、ダークの両腕がラセルトを捕らえる。
「それでも、今やらなくちゃ何も変わらないっ!」
 持って十秒。
 それ以上のトランスはラセルト自身の身が持たない。
「くふふ、ガタが来たみたいだね、ラセルトォ!」
 そしてそれだけの時間があれば、ダークがリュアールから離脱し、生き残る事も可能だ。
 今、終わらせなければ、永久に終わらない――!
 バチン、
 ダークの両腕による拘束を無理矢理に弾き飛ばす。
 九。
 すぐさまこちらの動きを止めようと暗い波動がこちらへ飛ぶ。
 それもそうだ、十秒耐えれば、向こうは次の機会が伺えるんだから。
 八。
 太陽銃によってそれをうち消したところへと、ダークの右腕が襲いかかる。
「まずっ――!」
 両腕をそちらに突き出し、真正面から受け止める。
 七。
 六。
 五……。
「どうしたどうした! もう終わりかい、ラセルト!」
「う、あああああああああああああああ!!」
 一瞬だけ。
 ラセルトの中から、何かが炸裂した。
 一瞬だけ。
 ダークの動きが、何かによって止められた。
 四。
「え」
 ダークの呟きが、明け方の空に響く。
 しかし、ラセルトはそんな事には構わない。それらの理由を考えるだなんて、後で良い。
 今はただ――!
 三、
「リュアァァァァァァァルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
 高く、高く跳び上がり、彼が彼であった時の名を叫ぶ。
 グラムが、エンチャント・ソルを付加し振り下ろされ――!
「嫌だあああああああ!!」
 死への拒絶と共に、ダークの両腕が盾として突き出される。
 二、
 それはグラムによって切り裂かれ、もはやダークを護る物は何もない。
 そう思ったラセルトに、いつの日か彼の父に対してクイーン・オブ・イモータル、ヘルの使った暗黒魔法が襲いかかる。
『デス……!』
 おてんこ様が呟く。
 これごとダークを撃ち抜かなければ、もう――!
 太陽銃を引き抜き、ダークの――その中心にいる、リュアールへと銃口を向ける。
 一!
「暗黒おおおおおおおおおおおおおおおおおおおく!!」
「太陽おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 二つの雄叫びと共に、
 最後の一撃が、螺旋の塔の頂上で、爆ぜた。
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