第十五話
「ぜ、……っ、ぜ」
肩で呼吸をしながら、ラセルトは目の前を見る。
そこには、ダークが仰向けに倒れていた。袈裟に切り裂かれた傷から、闇が溢れ出ている。
「くふ」
それが、口を笑みの形にねじ曲げた。
「くふふふふふふ、くはははははははははははははははははは!!」
『何がおかしい!』
おてんこ様の叫びに対して、ゆらりとダークは立ち上がる。
「面白い、面白いよラセルト……!」
言いながら、両手を真横に突き出す。そして高らかにそれは叫んだ。
「集え、エターナルよ!」
明るくなってきていた空が、暗く染まる。月さえ黒く染めたその闇が、ゆらりゆらりとこちらへ向かってくる。そして、今立っている螺旋の塔。その下から這い上がるように、闇が迫る。
ザジやサバタから聞いた事があった。父が戦った、絶対存在。
ヨルムンガンド、そして、ヴァナルガンド。
銀河意志によって生み出された、死の概念を持たない存在。故に、封印という手段を持ってしか留める事が出来ない。
それが、ダークの中へと入っていく。
ずるり、ずるりと。
蛇のような、狼のような、それら。
「この世界は全て僕のためにあるんだぁ……っ!!」
闇が、増幅する。
悪意が、ざわざわとこちらに迫ってくる。
伯爵が言っていた、それは、僕にもある力だと。
父が言っていた、悪意は、意志という力だ、と。
みんなは、伝えてくれた。
意志という力は――。
ボクらの太陽は――。
人類が、銀河意志という絶対の力に勝利する為の、唯一の武器!
「……負けられ、無いんだ」
目の前にいるそれが、自分と同じ力を持つ者だったとしても。
目の前にいるそれが、例え銀河の意志だったとしても。
負けるわけには行かない。
護りたいんだ、――この世界を!
「おてんこ様!」
『……うむ!』
頭の中で、おてんこ様が頷く。
生半可な覚悟しかないかも知れない。世界なんて、重すぎるかも知れない。
――それでも、やってみせる!
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ラセルトの下に、漆黒の魔法陣が展開される。
ダーク・トランス。
それは、ラセルトの中に在る、悪意という名の、意志の力。
その意志は、深い闇だって、照らす事が出来る!
闇も、光も。
分け隔てる事なく、全て彼の力となる。
「……なんだよ、それは」
ダークが、呟く。
黄金と、漆黒。二種の光を纏ったラセルトを見ながら。
「なんだよ、それはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
巨大な闇の巨人となったダークの右腕が、ラセルトに振り下ろされる。
ラセルトの両手がグラムを抜き放ち、その一撃を受け止め、そして弾き返す。
「闇は――怖いよ」
呟く。
「怖いけど――。闇は、光があるから生まれる。闇があるから、人は灯りを求める。闇があって、光があるから……」
まっすぐに、ダークの中心にいるそれを見つめる。
「この世界は、綺麗なんだよ、リュアール」
言葉と同時に、ラセルトは駆け出す。
「黙れよ、ラセルトォォォォォォォォ!!」
言葉と同時に、ダークは迎え撃つ。
最後の戦いが、始まる。
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