第六話


 結論から言えばその通りだった。
 次の日に登校した時には男も女も俺と拓真の居る教室へと来ていた。
「ごめんなさい。覚醒者だとは思わなくて……」
「構いませんよ。見た目が見た目ですし、僕の異能は」
 昨日サバタを喚んだ男は一言も喋らない。目の前の女――佐竹原睦月と名乗った。昨日思った通り矢張り上級生だった――が言うには、男の名前は干子陽輔というらしい。
「それで、鏡蝶のことなんですが」
「うん。最近急に話が広まってね」
 誰も行った事が無いはずなのに、誰もが知っている。
 余りにおかしいな。
「となると、拓真の言うとおり何かめんどいことが始まってる、か」
「……君、やけにさらりと言うわね」
 ん? あぁ、
「慣れてますから」


「とまあそういう展開なんだが」
「お前そこで慣れてます発言は無いだろ」
 友人と帰りながらそんな話をしたら笑って返された。
 え、異能の話が出来る相手? 居るんだよ拓真以外の同年代にも。
 そんな感じで俺の横を歩いているのは晶波卓斗。高等部に進学してからクラスが別になったのでこうして下校の時に話したりする程度、だ。
「そんなことよりうちの楓がだな」
「相変わらずだなこのシスコンめ」
 全く、どこの世界のどの瞬間に行ってもこれだけが変わらないのは何故だ?
 そうじゃないこいつを見た事が無いんだが。
「ま、冗談はさておき」
「冗談……だと……?」
 こいつが楓ちゃんの話題を出すときに冗談だとは到底思えないんだが。
 そんな俺の目線をさらりとスルーしながら、
「まためんどくさい展開になってるんだな」
「まあな。でもなんとかなるだろうよ」
 よほど酷い展開にならなきゃね?
「そうかい。じゃあ本当にヤバくなったら呼べよ」
「ああ。その時は頼む」


 かといって、今日は別に新月という訳ではない。
 というか二日連続で月が無かったらそれはとんでもない展開である。
 そんなこんなで暇を持て余している俺。拓真の奴は俺と違って部活に所属しているので今は連絡が取れない。
 故に自宅でごろごろとしているしか――。
 ピンポーン。
 インターホンが鳴ったので下の階に降りる。
 印鑑とか必要だったら面倒だな……。あー、でもあっこにあったっけ?
 そんな事を考えながら扉を開ける、
「あ、義和か」
「ご無沙汰してます春日さん」
 そこに立っていたのは城戸義和だった。学年は俺の一個下。しかし頭は俺より遥かに良い。……何故だ!
 その横に立っているのは――。
「鳴神か」
「久しぶり、春日」
 鳴神莉沙。ちょっと前にドタバタがあったときに知り合って以来たまに連絡を取っている。
 学年は一個上なのだが、色々と事情があってタメ口で話している。
「最近起こっている事で話したいのですが、時間ありますか?」
「暇を持て余してた所だ、俺の部屋で良ければ上がれよ」
 解りながらも一応質問をしてくれた義和を家に上げる。


「取り敢えず昨日世界をざっと見てみましたが特に中心点は見あたりませんでした」
「流石だ、仕事が早い」
 ついでに言うなら正確だ、こいつの仕事は信用できる。……しかし、それで発見出来ないとなると中心点はそう簡単に見つからないな。
 はてさて一体どうしたものか……。
「更に別の世界に中心点を隠してる、とかは」
「それはあるかも知れんな。或いは地下か」
 この騒動が人為的な物なら恐らくあの鏡の世界の中心点にこれを引き起こしてる張本人が居る。
 ……んだろうが、
「目的がなあ」
「其処です。何を考えてもそこが解らない」
 珍しく本当に悩んだ表情をしながら義和が呟く。
 鳴神も横で考えているようだが矢張り答えは出ない。
「本人に聞くのが一番早い、って事になるのかねぇ」
 一月後、か。それまでに何が起きるやら。
「何かあれば手伝うよ?」
 卓斗の奴と同じような言葉を鳴神がかけてくれる。
「助かる。力が必要な時は連絡するよ」
 飛んでいくね、と言いながら彼女は笑った。
 あの時より大分感情が豊かになった、良い事だ。
「それで春日さん、もう一つお話があるのですが」
 再び表情を真剣な物に戻した義和がこちらを見た。
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