第四話


 黒の右腕を喚び、斬りかかってきた『俺』の剣と交差する。
 こいつは俺を確かに殺そうとしている、だが微塵も敵意を感じられない。
 どういう事だ……?
 思考を巡らせている間に『俺』の剣によって右腕が弾き飛ばされる。
 其処へ更に襲いかかってきた剣を右手で掴み取る。
 顔がぶつかりそうなほどの距離で俺と『俺』の視線が交錯する。
 ――。なんだ? 見た事のある感覚、
「、ぐ」
 まずい、意識が途切れる。
 何かしらの能力者だったか、それとも全く別の何かか。
 そこに崩れ落ちないようただ立つ事しか出来ない俺を、
「……」
 そいつはもう数秒見つめてから、ゆらりと虚空に消えた。
 同時に力が抜けて地面に倒れ込む。
 なんだったんだ……?
「訳がわからんな」
 思った以上にやっかいな展開になってきた、そう考えながら携帯を取り出す。


『悪いが鏡蝶については拓真に話した以上の事はわからんな』
「ち、やっぱりか」
 電話の向こうからがさがさと音がする。引っ越しの準備でもしてるのか。
『それより、その状況ならまずは拓真を探した方が良いんじゃないか?』
 確かにその通りだ、そうさせて貰おう。
 通話を切ろうとしてからふと思い出し、
「おい、真那」
『っと、なんだよ』
 急に呼ばれた為に多少驚いたような声が聞こえてくる。
 一つだけ疑問に思った事を聞いておこう。
「あの『俺』……。お前であるようにも見えた」
 数瞬電話の向こうで考え込む様な間が空いて、
『俺自身が元々はお前のソゥハイトみたいなモンだったんだ、多少似通っててもおかしくはないだろう。……が、多少気になるな』
 暇があったら俺も調べておこう、と返事を貰えた。
「助かる。じゃ」
『ああ、じゃあな』
 最後に一言だけ交わして通話を切る。
 ポケットにしまい込んでから白い壁に触れる。
 感覚的に、恐らく通常の人間では壊せない壁、だ。覚醒が必要、ってとこだな。
 出るためにはソゥハイトの覚醒が必要、出さなければこのまま餓死ってとこか。
 仮に鏡の中に助けが来たとしてもそいつが覚醒者じゃなきゃそのまま一緒にご臨終。
 となると、覚醒者を必要とする誰かが居る、って事か?
 そこまで考えて、とりあえず此処を出る事にした。
「来い」
 俺の影から闇が現れ、俺の身体を這い上がる。
 その全てが右腕にまとわりつき、漆黒の力が右手に宿る。
「そーれ、っと!」
 異形と化したそれを壁を引きちぎる様にして振り下ろす。
 ずるりと白い壁が消え去り、拓真の部屋全体が見えるようになった。
 これで外も歩ける様になったハズだ。
 さて、しかしどこへ行った物か……。
 まあ、
「考えるのは苦手だ、さっさと進もうか」
 壁を突き破った先、まるで違う世界へ一歩踏み出す。
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