第二十話


「……どういうことだ」
 呆然と、俺の目の前で。
 干子陽輔は呟いていた。
「春日和途。何故お前が生きている」
「簡単だよ。サバタは元の世界に帰った。世界の崩壊は止まってる」
 後は元に戻すだけだ。
「そうか、ならばこれが最後だ」
「アンタをぶちのめして世界を護れ、ってか?」
 その通り、そう呟き干子――いや、『世界の始点』は立ち上がる。
 こいつを叩きのめして二度と世界を殺せない様に縛り付ければハッピーエンド、ね。
「つまらん」
「何?」
 俺の口から零れた言葉に、『始点』は怪訝そうな表情を浮かべる。
「つまらねぇ、つったんだよ」
 そんなんでハッピーエンドになるかってんだ。
「ならば俺が世界を終わらせよう」
 暗黒の剣を、『始点』は手にする。
「世界を護るなら俺を」
「倒せ、ってか? ……そもそもアンタの言う『世界』ってのが間違ってるんだよ」
 既にこの瞬間、
「俺はそんな親しくも無ぇが、アンタを含んだ『世界』を持つ人間が居るだろうが」
 干子陽輔と名乗った彼、
 その個人を自身の世界の中に数えている人間が。
「……馬鹿な事を」
「馬鹿? 違うね」
 誰にだって、一つはあるもんだ。
 切っても切れない縁が。
「ならばそれを証明してみせろ、何もなくなったこの世界で!」
 ここに立っているのは俺と『始点』のみ。
「俺を助けてくれる奴が居る」
 突き刺さったままのシュヴルツを抜き、構える。
「俺との約束を守り抜く人が居る」
 白銀の大剣が、稲妻を纏う。
「憧れた人が居る」
 俺の足下に、朱色の魔法陣が広がる。
「お前に殺せるか」
「世界は俺が創り上げた。殺す事など」
 違う。
「世界じゃねぇ」
 俺と、みんなを繋ぐ糸。
 口に出して言うのは少しばかり恥ずい言葉だけど、な。
「俺たちの『絆』を、だ」
 魔法陣が炸裂し、一気に『始点』へ向けて加速する。
 瞬間、『始点』の展開した幾千もの攻撃が俺へと降り注ぐがその全ては悉く打ち破られる。
「く、……!」
 世界の始点、それが世界を創り上げるだけの膨大なエネルギーを一振りの剣として構成し、
「おおおおおおおおおおおっ!!」
 俺へと向けて放たれる。
「これにて証明終了だ、とっとと帰るぞアホンダラぁッ!」
 シュヴルツの刃が紅い稲妻に包まれ、巨大な紅い閃光と化す。
「リコリス、」
 彼の剣を、“俺の世界”は容易く切り裂き、
「ラジアータァァァァァァァァァァ!!」
 その向こう側に立つ彼へと振り下ろされ、
 世界を、閃光が包む。
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