第十四話
学校には来たが高等部二年の教室には行かない。
干子は休んでいるだろうし、居たとして話しはしないだろうし、こちらで能力戦を繰り広げるなど以ての外だ。
昼休み、九曜と話しながら高等部三年五組の教室へ向かう。
窓際に座っているそれらしい雰囲気の先輩をみつけて、お邪魔いたしますー、と誰に言うでもなく呟いてから教室にそそくさと入らせていただく。
俺たちに気づいたか、その先輩はこちらを向き、
「えっと……。君が晶波君の言っていた?」
卓斗……。頑張って隠しててもここでバレたぜお前の努力。
一瞬先輩はしまったという顔をしたがもう遅い。そんな事を考えながら答える。
「はい、春日です」
「じゃあ、そっちが九曜君か。解って来てるとは思うが、僕は秋野修一だ。よろしく」
で。流石にそのまま秋野先輩の教室に居るのもあれなので屋上。
「つまり、鏡世界はどんどんと広がっている」
「で、それがこっちと同じだけの広さになる頃には」
こちらが全て消滅する、と。
世界の始点が創り上げた(つってもただ彷徨いてるだけだけど)鏡世界が成立した瞬間、それまで世界の始点によって形成されていたこちらの世界は消滅する。
……あれ、鏡世界が広がってくってことはどんどん始点の位置がわからなくなってくのか。
不利な条件が多すぎるぞ。
「そういうことだ。僕らは既に崖っぷちに立っている」
しかしなんでまあここ一年程度の記憶しか存在しないような状況になってるのに、割と平和なんだこっちの世界は?
「過去を振り返るような暇が無いんじゃないか?」
……現代人恐るべし。
「リミットは春日君の言うより更に短い。長く見て三日だ」
三日!?
「三日ぽっちでこの状況を止めろってことですか」
月の落下を防ぐより難易度高いぞ、巻き戻しなんぞ起こらないんだから。
「まあ、三日後は新月だ、記憶がある内にメモでも取って置いた方が良さそうだね。『鏡に入る』って」
「具体的に書いておかないと自分で自分をなんだコイツ呼ばわりしそうですね」
九曜の冗談に俺も秋野先輩もつい吹き出したがすぐに笑いが止まる。
よくよく考えてみれば冗談にもならない状況かも知れないからだ。
「あと、これは僕の推測なんだが」
そう前置いてから秋野先輩は語り出す、
「覚醒者を作り出すかのような鏡蝶の噂。あれは世界の始点が作り出したものだと思うんだ」
「……どういう事っすか?」
「“試されてる”気がするんだよ」
つまり、
世界を生かすか殺すか、それを試すために覚醒者を生み出した、と?
「ああ。自分が生み出した世界。そこに生きる生物が存在する価値があるか、っていうね」
それはひどい。
価値も何も、そんなもん必要無いだろうよ。
「世界の始点はそうは思わないんだろうね」
勘弁していただきたいものだ。
「まあ、……未来を護るために戦う、ってのは大義名分としては十分だから構いませんがね」
元々護ろうとしてたのがなんだかは忘れたが。
前へ/戻る/次へ