第十三話
そんなこんなで九曜と別れたが、まだ出来る事もあるだろう。
世界の始点が彷徨いてると言うなら、鏡世界が唐突に生まれたのも納得がいく。
俺が世界を誕生させた時に中心として使ったのは樹、だった。
しかしこの場合そんなものは必要ない、世界の中心は今そこらを彷徨いてる――世界の始点がいることによって、ここに新たな世界が構築されてる、ってことだ。
ってことで、それを探して俺も彷徨いてみる。俺が考えながら歩くとろくな事にならないのでぼけーっとしながら。
と、
「……あるぇー?」
いつの間にか囲まれていた。何やってんだか。
飛びついてきた異形を弾き飛ばす。それはごろごろと二転三転してからすぐさま飛び起きる。
さっきまで居なかったのに現れた? どうなってんだか。
異形の出現条件でもあるのだろうかと辺りを見回そうとした瞬間、
闇に呑まれて全ての異形が消えた。
「なに?」
呟いた頃には背後に誰かが立っていて、
「……、」
振り向いた先には干子先輩が立っていた。
「、先輩でしたか。ありがとうございます」
形式的に礼を言うが黒の右腕は解かない。
前回剣を俺に向けた時も思ったが、どこかしらこの人は危ない。
そもそもが俺と違うもので構成されているような気分。
「お前は」
干子先輩が唐突に口を開く。
何事かと聞き返そうとしたところ、
「お前は何の為に戦う」
「何の為、って……」
暗黒の剣が俺に向けられる。
瞬間、自動的に俺のソゥハイトが開放されて黒の右腕が異形と化した。
俺が発動させようともしていないのに。
「世界の滅びを止めて何になる」
「……アンタ何者だ」
世界が滅ぶということを理解して止めない、ってのは。
よほどの厨二病か、それとも――。
「世界の始点がアンタか、ってとこか」
黒い剣が黒い腕とぶつかる。
「違うな。俺はただ、俺の望みを叶えるだけだ」
「ハッ、それで世界さえ消滅したらお話にならんねぇ!?」
ガゴン、と無理矢理に剣ごと干子を弾き飛ばす、
追撃した俺の右腕を軽々と先輩は避けて、
「お前も同じだろう、春日和途」
「今日はよくフルネームで呼ばれる日だ。……変わらんね、確かに」
昔はそんなことを考えていた気がする。
しかし、
「決めちゃったんだよね。護れるなら護るってな」
その為に、俺は再び夢を見たんだから。
二度目、剣と腕が交差し、
「決めた、か。その理由は『覚えて』いるのか」
「残念、世界の崩壊スピードは思ったより速くてね。……そろそろまずい」
力の使い方は解っている、だが、何故力を得たのかは解らない。
護ると決めた事は覚えている。だがその理由は解らない。
それでも、俺は。
黒の右腕で彼の剣を掴み取ろうとした瞬間、舞うようにして彼は俺から距離を取った。
「そうか、なら来れば良い」
そう言って彼は手を上げて、
「暗黒転移」
闇に呑まれて姿を消した。
「……。理由、ね」
俺の記憶の残りはせいぜい一年。
そうだな……。リミットはあと一週間もあれば上々か。
「思い出せなくても、やるしかないさ」
呟いて、俺は鏡世界を出た。
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