第十一話
「で、」
一通り床の片付けを終えて畳の上じゃなくて良かったと安堵してから話を再開する。
「世界の始まり、っつったな」
「そうさ、子供の頃考えなかったか?」
父の父のそのまた父の祖父、その祖父の祖父の曾祖父の曾祖父の……。
以下省略は一体どこのどちら様、ってか?
「そう、それだ。全ての生物の起源を突き詰めて、存在を遡る」
「それに用意された『答え』が――」
あの、『俺』。
つまりあれは俺という存在の起源へと遡った答えであり、真那という存在、世界の全ての最初、その答え。
「あれが樹形図の一番最初に存在する者、だ」
「ふむ、で、世界の始点が『俺』に見えた理由は」
「そりゃお前にとって一番近い存在はお前なんだ、お前に見えるだろうよ」
なーるほど。だから真那のようにも見えたわけか。
ってことは見ようによっては義和やら卓斗やらにも見える訳か?
……なんじゃそら。
ん? と、なると。
「まあ、やることは一つだ。世界が過去から崩壊してるなら、そりゃ始点で何か起きたに違いない」
「だよな……」
……。
うぁーくそ、悪魔逃がしたのは失敗だったなあ。
「それ捕まえときゃそれでハッピーエンドだったかもなあ」
「あー……。やらかした」
真那の意地の悪い目線から目をそらして外を見た。
夕焼けが、嫌に綺麗に外を包んでいた。
「さて、仮説を伝えたところで俺は行くとしよう」
「あー、わざわざ悪かったな」
構わんさ、と言って真那は玄関へと向かって歩いていく。
扉を開けて向こう側に出たところで振り返り、
「ただ、急いだ方が良いぞ。過去が消滅してるってことは、こっちに近づけば近づくほど俺たちに不利だ」
そう言って扉は閉められ、真那の足音が遠ざかっていった。
過去が消滅してる。それはつまり、今この瞬間までの記憶がざりざりと削り落とされてるってことなんだから、別次元との記憶継承やら接続なんてなんのアドバンテージも持たなくなる。
こりゃあ厳しいねぇ。
「しかし。そうなるとソゥハイト覚醒を仕組んだのは誰なんだか」
別件だったらそれはそれで勘弁して欲しい。
夜。
メールを送ってみたが返信が無い辺り、拓真の奴はもう寝たか。
義和は……。呼べば来るだろうが、流石に巻き込みすぎだろう、今日辺りはしっかり休んで貰おうか。
居間に行き、鏡を見る。鏡世界への入り口が、そこには静かに存在していた。
さて、行くとしようか。少しぐらい俺が動かないと他の奴らが可哀想だ。
と、唐突に携帯がポケットの中で自己主張を始める。
流石に夜中だと振動音だけでも大分うるさいものだ。さっさと取り出して受信したメールを開く。
差出人は不明、内容は一言。
『鏡世界にて待つ』
……おいおい、どこのどちら様だよ。
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