第九話


 せめてと右腕をガードに回したが、衝撃が来ないため前を見る。悪魔の両腕が鎖のようなもので縛られていた。
「ハッハァ! 感謝しな小僧」
 何々今度はどちら様!?
「あーもう黙ってろって! 大丈夫っすか」
 横を見るとちょうど先ほどの少年――確か神山だったか。彼が来ていた。声をかけた方向を見るに、どうやら彼の武器は意思を持つらしい。
「神山か。湯沢はどうにか助けられたよ」
 悪魔を押さえ込んでいる神山の横へ義和が降りてくる。明という少年の名字は湯沢とか言うらしい。
 神山が安堵した表情を見せた。しかしあのドラゴンゾンビはどうしたんだ。
 と、それが居た場所へ目線を向けると、両刃の長剣を頭蓋に突き刺され堕ちていくそれが見えた。拓真の奴いつのまにあんな所行ってたんだ……。
「ところであの……、もう保たないっす」
 しまった、神山君奮闘中なのを忘れてた。
 目線を戻した瞬間、鎖を弾き飛ばした悪魔が神山に飛びかかろうとして、
 その腕を切り裂かれた。
「っと、佐竹原先輩!」
「一声かけてくれれば手伝いに来たのに……」
 今日は干子先輩とは一緒じゃないみたいだ。結構な深手を負ったようで、悪魔は月の方へと走って逃げていった。
「ッチ、今度見かけたらぶっ倒して」
「はいはい解った解った」
 喋っている途中で神山が持っていた武器をどこかにやった。恐らくは拓真のグラディウスやらみたいに能力を発動する様に出現させるタイプなのだろう。
 しっかし、
「結局なんなんだあいつ……」
 俺イコール真那までは解るがそれがなんでイコールで悪魔と繋がるのか解らない。
 ええいイコールの文字がゲシュタルト崩壊しそうだぞ。
「しかしあの闇。どこかで見た事がある気がしますね」
 ん、義和もか。
「えぇ。……もっとも、僕自身が見た記憶は無いので恐らく『別の僕』でしょう」
「あーそっか、お前『知った』っけ」
 えぇ、と義和はこちらを見ながら笑って見せた。
 佐竹原先輩や神山は不思議そうな顔をしていた。
 ……まあ、話しても何言ってんのこいつな目線が襲ってくるので止めておく。


「で、僕の家が凄い事になってきてない?」
 だから両親出張により不在で一軒家で独り暮らしなんて以下省略。
 そんな感じで全員拓真の部屋に来てベッドに放置された湯沢少年が目覚めるのを待っている状態だ。
 しかし俺やらは良いとして皆さんお家帰らなくて良いのこの時間? 深夜よ?
「何か言われたりしない程度の成績は常に取っていますので」
 義和が笑いながらこちらを向く。ええい眩しい、眩しすぎて見れない! そして妬ましいっ!
「というかこの時間うちの親起きてないっす」
 と神山少年。……確かに。もう二時だしね。
 これは……このままお泊まり会フラグ!
「僕の家にそんなに寝具は無いよ」
 真那に作らせれば良いよ。……流石に冗談だが。
 とまあそうしているうちに湯沢が動きを見せた。どうやら起きた様なので全員がそちらを見る。
 俺ならこんな状況で起きたくない。授業中に寝てるの指摘されて全員がこっち見てる感じだ。
「う、ん……、うわ!?」
 ほら案の定。
「それ義和、事情を話せ」
「了解しました」
 同年代が一番話しやすいだろう。というか拓真は説明めんどくさそうだし俺は説明なぞ出来るほど語学力が高くない。


「まあそういうこと」
 話し終わったところで場の空気は凍っていた。そりゃそうだ、世界の滅亡なんて話までついでとばかりにちゃっかりされたら困ったものである。
 色々と騒動に巻き込まれてきた俺がビビったんだからその比じゃないだろう。
「さて、君がどんな状況になったかだけ聞こうか。何かしらのヒントがあるかも知れん」
 動揺しているうちに湯沢に話しかける。
 少しだけ身を固められた。そんなに俺変な顔? ……いや、なるほど。
「へぇ、面白い能力を」
 何故見抜かれた、と驚愕を浮かべる瞳の中に拒絶を見ながら俺は湯沢に手をのばす、
 触れるわけにもいかないらしく湯沢はただ俺の手から放れた。
「っと、すんません先輩、そいつ」
「いや良いよ、見れば解った」
 どうやら神山は湯沢の能力を知っていたらしい。知っていてなお側に居るなら、そりゃ良い事だ、友人は大切にしとけ。
 いざとなった時に頼れるのはそいつだけさね。
「しかし他人の歴史を見る能力、ねぇ? いつからだ」
「中学に上がってからです。最近は特に酷くて」
 他人の闇を覗くのは流石に気分が良いものではないか、湯沢は項垂れていた。
 まあ、能力制御の話は拓真に任せるとしよう?
「高等部一年七組に来いよ。拓真の奴に能力制御の方法は教えて貰え」
「えー、僕かよ……? お前の方が能力使ってる期間は長いじゃないか」
「馬鹿言え、お前の方が向いてるんだよ」
 能力的に考えて、ね。
 その後、湯沢から先ほどの出来事について覚えているだけのことを話して貰ってから解散となった。
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