第四話 デウス・エクス・マキナ
紡いだ神様が、心の中に語りかける。お前は何を望むのか、と。何の為に、自分を紡いだのか、と。
そんな問い、答えられるほど俺は自分の意志が確立している訳じゃない。
紡がないといけなかった、だから紡いだ。
それ以上も以下も、必要ではない。
右腕を真横に突き出し、軽く握る。そして、頭の中からそれに命令を与える。
力を、寄こせ。
ドクン、と心臓の鼓動とシンクロして、右腕が空間を歪ませる。それと同時に右腕は黒い異質へと変貌を遂げる。
ソレ越しに見た緋芽の瞳が少しだけ怯えた物だったとしても、それはしょうがないことだろう。
(大差無いし、な)
それを裏拳気味に大きく振ると同時に、何体かが吹き飛ぶ。其処から今度は真逆に、大きく手を開いて、まるで空間を切り裂くかのように、爪を振るう。
ズルリと切断されたそれが床に力無く崩れ落ちる。と、それを踏み潰しながら何かが歩いてきた。
何か、でかいの。
「おいおい」
恐らく、サイズから考えるに、教師陣のどなたか、という事になるだろう。なんて事を考えている内にそれはばかでかい腕をこちらに振り下ろし、
「っんの!」
ごん、と鈍い音を立てて、黒い右腕とぶつかる。鬩ぎ合いながらそれは均衡を保ち続け、動けない。
視界の端で、異形が自分の横を通っていくのが見えた。ある程度知能があるのかないのか、この状況で緋芽を狙う事にしたらしい。
どうする、どうする……!?
(まずい、早くこいつを……!)
思いはする物の、図体のせいかこいつの持つ力は半端でなく、とても押し返せない。かといってこいつはこちらに何かする訳でもなく、それはつまり、俺の足止めを目的として攻撃してきたという事になる。
と、次の瞬間に、それの力ががくんと抜けた。何が起きたかを考える前に、黒い右腕を解除し、そのまま緋芽を抱きかかえて跳ぶ。
そのまま壁に激突してから直ぐさま異形達の方を向き、気づいた。先程まで俺を押さえ込んでいたそれに突き刺さっていたのは、白銀の大剣。
(また……)
同類が居るという感覚と同時に、またこうなったか、という何とも言えない感覚が襲う。
また、こいつは。
(そいつを、見てるのか)
「楓……ちゃん?」
緋芽が、呟く。其処に立っていたのは、晶波卓斗。だが、その背に浮かぶのは、昔亡くなったハズの、彼の妹、晶波楓。
白銀の大剣を異形から引き抜き、そして卓斗は、
「う、おぉぉぉぉぉぉ!」
ただ、吼える。
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