第二十七話 それぞれの目的


 ボクらがこの一年で得た物はなんだろうか?
(少なくとも戦う事に対する遠慮は無くなってきてるかな)
 義和は篠鐘達を見てそう思った。
 現時点で、シュブニグラスという勢力は世界を元の方向(元の平和、という言葉で表せば良い物を方向として表現している辺り何かありそうだが)に戻すと宣言した一年前の思想そのままに活動している。
 だが、だとすればこちらと手を組んでも問題は無かったはず。
 それでありながら戦闘を起こし、そして鳴神先輩を連れて行った。
 ……一体何が目的なのか、それは解らない。
 それともそれは必要な事だったのか。
(……春日先輩に会えば解る事か)
 彼は今頃どうしているのだろう?
 そう考えはするが、篠鐘の記憶の中では春日先輩が紅瀬先輩を刺した事になっている事を思い出すと、
 迂闊に会えない事だけは確かだろう。
「義和」
「、ああすみません、少し考え事を」
 晶波先輩がいつの間にか目の前に来ていた。
 いけないな、余りに思考に没頭しすぎた。
「リンゴの奴は?」
「春日先輩の情報を集めにいったままです」
 そうか、と卓斗は呟いた。
 リンゴの話によると、春日が彼と別れたとき、彼は彼を失っていたらしい。
 しかしその後に学校の方から白い光が迸ったという情報から考えると、
 彼のソゥハイトの残骸が何かを起こした可能性もある。――が、相手が春日だろうと油断はしない方が身のためだろう。
 最近出没しているモデルSという名の兵器。アレに対してシュブニグラスは最近行動を起こしている様だが、如月真那と名乗るあの人物が居て、それでも未だ攻めあぐねている事を考えると、迂闊に近寄らない方が良いだろう。
 それよりも、モデルSによって地上に全ての勢力の意識が向いている今。
 僕たちが目指すのは――。


 放たれたバスターをレイプトラズトで防ぐ。
 ソレごと切り裂いたセイバーを黒の右腕が受け止める。
「おやおや、能力は復旧し終わったのかい?」
「おかげさまで……っ、な!」
 息を吐き出すと同時、白の左腕でセイバーの横を殴り弾き飛ばす。
 体勢を崩した其処に剣型に再構築したレイプトラズトで斬りかかり、
「残念」
 以前対峙したときにも彼の使っていた二振りの刀がそれを防ぐ。
 同時に彼の蹴りが春日を吹き飛ばした。
 空中で体勢を立て直し、凌に向かって火矢が飛び貫くが、
「残像!?」
「O.I.S.だよ。知らない訳じゃあるまい」
 いつのまにかソレは後ろにいた。
 背後からの一撃に対し障壁を展開するが難なくそれは打ち砕かれたたき落とされる。
 肺の空気が全て大気中に吐き出され、
「王手!」
 二本の剣をその背に、セイバーを持った彼が虚空を切り裂きながらこちらへと、
「させ、るかっ!」
 白の左腕から展開された光の帯が、その二本の刀を縛り付け、
 一瞬だけその動きは止まり、モデルSの目線はそちらへと向く。
 その一瞬が勝機!
「舞紫電!」
 淡い紫の稲妻が空へ向けて駆け上がる。
 その一閃はモデルS、天羽凌を切り裂く。
 ドサリと音を立てて彼は地に伏す。
 それと同時に体力の限界が来た春日もバランスを崩して倒れかける。
 デウス・エクス・マキナの託したブレスレットはこの一年の間に、体内に吸収されていた。恐らくはもう一度春日が幻想を手にした事によってそうなったのだろう。
 だが、矢張り余りに膨大な量の力を使うには春日では容量が小さすぎるようだ。
 あまり長い間使えば以前凌と戦ったときのように自分自身の身体の崩壊を招くだろう。
 それでも、
(使わなきゃ負けるってのはひでぇな)
 使っても勝てるかどうか解らないというおまけ付きだ。
 もって五分、それ以上行けば万々歳。
 そんな事を考えていると――。
「……ほう」
 唐突にモデルSは頭上を見上げた。
 春日の動きも同時に止まり、そして互いの視線が交錯する。
「時間だ。俺は退却する」
 言うと同時、モデルS――天羽凌は姿を消した。
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