第二十六話 モデルS
シュブニグラスの誕生からは、既に一年が経過していた。
手を取り合ったこの世界の技術は飛躍的な進化を遂げ、
しかしそれでも新たに動き出した脅威には敵わなかった。
『モデルS、尚もサン・ミゲルに向かって進行中!』
『くそ、たった一機でなんだよあの性n……』
ズガン、という射貫くような音が無線機から無意識に耳を離れさせる。
太陽都市が此処まで来て出したライブメタル。
それはモデルSと呼称されていた。
それまでに戦場に出てきていたロックマンとはまるで違うその姿。
たった一機戦場を滅ぼすそれはまるで、
ヒトの形をした悪魔だった。
「おい、おい!? く、そ、畜生おおおおおおおおお!!」
横で撃ち抜かれたのは彼の友人だった。
自分を突き飛ばした彼の体を、モデルSの銃が放った一撃が貫いたのだ。
感情に身を任せて光線銃をそれに向けて放つが、しかし傷一つつかずタイプSの銃口がこちらを向いて――。
ギン、と音を立てて自分の目の前でバスターは消え失せた。
「あ、なたは……」
「……済まん、遅れたな」
唖然とした表情で声を上げる男に向かって声を掛ける。
その目線は、真横で倒れている男へと向けられている。
「春日和途、だ。名乗った意味は解るよな?」
ザン、と春日と男の間の地面に風によって傷が付けられる。
恐らくは春日の魔術によるものだろう。
「この線より街の側に全員移動させろ。でなけりゃ命の保証は出来ねぇ」
あと、と焦るように続けて、
「そいつ、鳴神の所に連れて行けばまだ何とかなるかも知れない、急げ!」
彼の手が虚空を掴む。
それは恐らく神の剣と謳われる彼の武器なのだろう。
戦闘の開始を認識した男は、慌てて友人の体を抱えると、周囲の人間達を下がらせながら、他の人間と共に友人を運んでいく。
その光景から目を離し、全ての絵の具を混ぜ合わせた黒が、モデルSを射貫く。
ギリリ、と歯ぎしりをした音が何一つ音のない空間に響き渡る。
「……、凌ォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
大気を振動させ、吼える。
モデルSのライブメタル、それによってロックオンしているのは、
天羽凌。
「以前とは違うぜ? やってみるか春日和途」
モデルS適合者、天羽凌。
その右手に握られたセイバーと、見えない剣、水晶剣レイプトラズトが交差する。
「モデルS、ね。……凌の奴もやってくれる」
今回の拠点の中心で、真那は一人笑う。
「真那さん。……和途には、知らせなくて良いの?」
「構わないさ。あいつならその時に気付ける」
鳴神の質問に、真那はあっさりと答える。
躊躇うように戦闘の起きている方を鳴神が見ると、何人かの人間がが負傷者を引きずってきている。
それを見た鳴神がそちらへと駆けていく。
「さて、と。カードは大体場に出揃った、か」
誰も居なくなったそこで、独り言を空に向けて呟く。
(あとは『あっち』が解決するか、だな)
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