第二十話 さあ踊ろう
キュンッ。
かれこれ三度目の砲撃を目にする。だがそれは今度は校舎を射抜こうとする事無く、真下の何かを焼き尽くそうとしていた。
「こちらに砲撃が来ないと言う事は、どうやらごまかせたようですね」
「あぁ、どうにか、な」
義和の言葉に相槌を打つ。
それにしても驚いた物だ。俺のシュヴルツの中から白い光――和途のソゥハイトがまだ残っていたのだろう――が出てきたかと思ったら、それが機械に変化した。
それは学校周辺に防壁を張って……。
何故か外から見てみたら壊れてるように見える不思議空間のできあがり、という訳だ。
訳だ、と言ってもどういう訳なのかはさっぱり解っては居ないのだが。
取り敢えず横を見ると、秋宮先輩と篠鐘が話していた。どうやら元々面識もあったようだし、簡単にとけ込んでくれるだろう、有り難い。
さて、それよりも問題なのは鳴神先輩だ。悠斗を刺したという罪状は和途が勝手に背負ってどっかいったのでどうでも良いが、まず彼女が何故西棟に居たはずなのにこの東棟にいるのか。
いつのまにやら東棟と西棟はぶったぎれてるし、困ったもんだ。
下手に質問を重ねればまた雷撃でも放たれかねない。スタンガンってのも食らうとあんな感じなんだろうか。
……いや、知らなくて良いよね、うん。
と、足音が聞こえた。大分近い。
「義和」
「解りました」
言うと、義和は鳴神先輩の方へ向かった。秋宮先輩と篠鐘は覚醒している意識はあるだろうし問題はないはずだ。誰が出てきても篠鐘の暴走のきっかけは無いし。
階段をかつこつと鳴らしながら降りてきたのは、
「麗奈!」
秋宮先輩の声が聞こえる。このドタバタで大分色褪せてしまった上履きの色からも解るように、知り合いであるらしい。
何だか複雑な人間関係になってきた気もするが仲間は多い方が良い。
考えていると、麗奈と呼ばれた先輩がバランスを崩す。よく見てみるとどうやら足を怪我しているらしい。
「さっき切っちゃって……」
その切り傷はどうみても転んだりして切ったモノではない。何故か校舎は傷一つ付かないし、どこかに切れるような壊れ方をしたモノもない。
ということは恐らく覚醒はしているだろう。異形との戦闘で負傷したと考えるべきだ。
「あのゾンビもどきか」
「いや、違ったよ」
俺が聞いてみると、麗奈先輩――名札を見て解ったが、亥角という苗字らしい――は直ぐに否定した。初対面でありながらこれだけ話せるのも非常事態の成せる物、か。
どうにも気に入らない。全て誰かの思惑通りに動かされている気分になる。
「機械の兵隊だったよ。良くは解らない」
亥角先輩が言う。何種かあるような機械兵隊達で、銃口が腕についたような物や、ビームサーベルのような剣を振り回す物、二丁拳銃を使う物も居るらしい。
此処がどこかは解らないが、機械文明の発達した場所なのか……?
考えている間に、ガシャガシャという足音が聞こえる。各自が構えようとし、そして次の瞬間には走り出した。
状況が解らなかった奴の手は解ってる奴が引く。今は先ず逃げる事にしよう。
あの足音はあまりに多すぎる。こちらの人数も増えているとは言えあまりに多勢に無勢という物だ。
俺達の足音を確認したか、ガシャガシャという機械らしきモノのこすれる音が大きくなる。足の裏のセンサーとか言いながら階段から転げ落ちてくれると助かるのだが。
かくん、と亥角先輩のバランスが崩れる。それを見た義和がひょいと抱え上げ走り出す。畜生おいしいとこ取る奴だな。
ばたばたと騒がしい音を立てながら、避難訓練なんて実際効果無いだろうなだなんて思いながら校庭に跳び出す。
「……ねーよ」
校門の辺りを、機械達が封鎖するように立っていた。後ろから足音が近寄る。
それに振り返り後退る。じりじりと間を詰めてくる機械達、そして気づけば囲まれている。余りにできすぎた展開に困る。
『お兄ちゃん』
楓の声が聞こえ、我に返る。
それと同時に、機械が跳躍する。振り下ろされた光の刃を、シュヴルツを抜き放ち防ぐ。熱によって焼き切るのか、辺りの空気を焼くようにじりじりとした熱がこちらの手に感じられる。
が、どうやら俺の剣はそれで切れるモノでも無かったらしく、力を込めて吹き飛ばす。
「義和、援護頼む。秋宮先輩と篠鐘は怪我しないように立ち回れ」
鳴神先輩は、と向き直った瞬間、彼女の手に握られた片刃の剣が稲妻を纏っていた。
機械相手なら電気系が強いのはゲームとかでもよくある話だ。恐らく彼女はコイツ等に対しては優位に立てるだろう。
が、無茶はしないよう伝える。彼女は頷き、そして跳ぶ。
「かかってきやがれポンコツ共!」
吸い込み、そして吐き出したその言葉が、開戦の合図となった。
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