第十八話 ロックマン


 まずい、今の一撃でも凌は死ななかったかも知れない。
 となると反撃は当然予想される。アイツがまだ動けるとしたら動けない俺は不利だなんて話じゃない。
 重い瞼を無理矢理に開けると、洞窟のような洞穴のような空間だった。土色の壁と天井があって……。
「……アンタ誰」
 知らない人が其処にいた。
 古ぼけたコートに色褪せた帽子、ぼんやりとした視界に映る、腰に下げられた黄金の銃――。
「ガン・デル・ソル……!?」
「、」
 こちらの様子を見ていた男は腰に下げていた太陽銃を直ぐさま引き抜きこちらに向ける。撃たれても今はレイプトラズトを構成する力すら残っては居ないので死ぬかも知れない。
「ガン・デル・ソルを知ってるとは……。お前、何者だ?」
「そっちこそ何だ、それを持ってるって事は太陽仔だろうが」
 起きあがろうとすると、手足が蔦で縛られていた。
 攻撃の意思はこちらには無いし、動かなくても話は出来るだろう。そう判断して、確認した後また横に転がる。
「何、ちょっと色々在って、な」
「そのちょっと、を俺は聞きたい訳だが」
「……説明して良い物かどうか、判断に苦しむね」
 しかし、話さないと始まらないだろう。
 口を開こうとしたその瞬間、銃声が聞こえる。
「リンゴ!」
 言いながらひゅるりとひまわりが出現する。それはよく見慣れた姿で何故かミスマッチな渋い声を出す存在で、
「ちっ、お前の仲間か!?」
 言いながら、リンゴ(ってことはジャンゴの父親か)は太陽銃を構える。成るほど、考えてみればその服装はリンゴの物か。
 ガチャリ、と金属のこすれるような足音がする。ということは機械か? だなんて事を考えながらぼけっとしていると、
「ロックマン!?」
 馬鹿な、何故ロックマンシリーズがこんな所にいる!
「知ってるのか!」
 リンゴが罵声を浴びせるように声を発した次の瞬間、ロックマンは右手のバスターをゆっくりと構え、そして
「くそっ!」
 リンゴが放った光弾と、バスターから放たれた一撃が相殺する。衝撃で周囲の土壁が崩れ視界が遮られたと思った瞬間、ロックマンがこちらへと突っ込んできた。
「こちらの得意な距離とは有り難い!」
 そう言ったかと思うと、リンゴもそちらへ突っ込む。零距離で互いが互いに一撃を撃ち放つ。
 ガン! というヘビーショット特有の銃声が響き渡った後、其処は沈黙に包まれる。視界を遮っているその中からリンゴが姿を現したかと思った瞬間、
 その向こうから別のロックマンが現れた。
「っ……ち!」
 持って一回、発動すれば万々歳。
 盾状にレイプトラズトを構築する。それによってロックマンのセイバーが防がれ、同時にリンゴが敵の存在に気づく。
 ロックマンが体勢を立て直そうとバックステップを踏もうとした瞬間、
 レイプトラズトごと貫いて、剣型に構築された太陽銃のスプレッドが突き刺さっていた。
 音を立てて崩れ落ちた後、二体のロックマンは動かなくなった。
「済まない、礼を言う」
「別に、俺はアンタの味方じゃないかも知れないぜ」
「しかし、助けて貰った事に対しては言わせてくれよ」
 春日の目が点になる。
 瞬間沈黙し、そして吹き出す。
「くきゃきゃ、そういうところは息子に似てんだな」
「……息子?」
 しまった、と言ったような表情を春日が浮かべる。
 リンゴの瞳はじとりとこちらを見てくる。まずい、言い逃れなんて不可能だ。
「あー、……すまん、信じられないだろうが聞いてくれ」


 取り敢えず、教えて支障が無さそうな事は教えておく事にした。
「……成るほど、な」
「あれ、意外と納得?」
「でなければどうやって納得しろって言うんだこの状況」
「ごもっとも」
 蔦はほどいてもらえたので普通に座っている。
 それにしても、何故ロックマンが世紀末世界に介入して居るんだ?
 確かに電脳世界のロックマンがPETを通じて来ては居た(居た、と言っても未来の話だが)が、先程のロックマン達は別系列のロックマン達だ。
 どう考えてもどこかで誰かが仕組んだとしか考えられない。
 とすると、俺達が転移させられたのも何かしらの理由があるのだろう。
「……一波乱ってレベルじゃねえぞ」
 呟きは洞窟内に掻き消えた。
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