第十四話 また僕は
「……く、ぁ?」
体が怠い。寝起きのような感覚……いや、実際寝てたようだな、コレは。
東棟をどうにかしようと動いてる途中から記憶が途切れている。ぐらぐらと揺れるような感覚を持っている頭を横に振って意識をはっきりさせる。
何がどうなってようが、緋芽と遭遇する訳には行かない。あいつの記憶を弄って、俺が悠斗を刺した、という設定になっているのだから。義和にはそれは伝えたし、どうにかなるだろう。
鳴神にはそれを教えなければそれで終わりだ。どうやら彼女は西棟での記憶は持っていないようだし、な。
しかし、記憶を持たないとか持つとか以前におかしな話だ。何故彼女は西棟から
かつん、
その音だけで思考の海から急激に引き上げられる。物陰に飛び込んで階段から降りてくるその足音を聞く。
異形が一体降りてきていた。デウス・エクス・マキナを喚ぶ。異形の背に白の右腕を当て、直接力を流し込む。
一瞬だけ電気が走ったかのような反応を見せたが、異形は振り向く。
『……無理だよ、和途』
「、……あぁ」
つつ、と、異形の顔をなぞるように白の右腕が薙ぐ。ずるりと肉が切れ、床に落ちると同時にそれは消滅していく。
幾ら力を手にしても、救えない物があって。
「……そういえば、また独りか」
学校は無事に降りたらしく、空は青々としていた。黄泉の国とやらでは無さそうだ。
『篠鐘の記憶を変えておいた。屋上で紅瀬先輩を刺したのは俺って事になってる、篠鐘が俺と遭遇しないようにしてくれ』
義和は一人、周りの人間より先に目を覚まし、其処にいた。
起きると同時に自分の『影』が春日からの伝言を伝えてくれたが、自分が上手く立ち回れるかどうかが問題だ。
「さて、どうするかなぁ」
言いながら立ち上がると、はらりと何かが落ちた。拾い上げてみるとそれはメモ用紙で、
『遭ったら遭ったでその時だ、気楽に踊れ』
「……こういう人だから、なぁ」
というか何故メモ帳になんか書いたんだろう? と少し考え込んだが、一度伝言を頼んだ後にふと思いついてまた伝言を頼むのも微妙だとでも思ったんだろう、きっと。
女性陣よりも先に卓斗が目を覚ましてくれたので春日からの伝言を伝えておく。
「成る程、ねぇ。アイツは全く……」
卓斗が溜息を吐く。いつの間にか彼の後ろのソゥハイト(と言うらしい、と卓斗が教えてくれた。何でかと聞いたら楓がそう言ったというので反論はしない、否、出来ない)は見えなくなっていた。
どうやら今は引っ込めているようだ。義和のソゥハイトも完全に目覚めた訳ではないから、不動明王は彼の中で眠るような状態となっている。
……ソゥハイトが完全に目覚めた訳でもないのにあれだけ動ける事は相当凄いのだが、それにツッコむ者は今は居ない。
「へくしっ」
……誰の物かは語るまい。
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