第一話 月夜の黒光
???「誰だっけな、俺。」
紅く染まった手に、黒い剣を持った少年が呟いた。
その前には、数秒前まで人間だった物の像。
そしてその上には、明るく輝く、満月。
一応、名前はある。
夜に生きる者――夜奴(ヤト)。ソレが、自分の名前。
他の物は全て捨ててしまった。
否、忘れてしまった。
何かに奪われた、全てを。
自分は求めている、が、見つからない。故に、半ば諦めている。
ただ、仕事をこなして、生きていくだけだ。
???「おぉ、夜奴。帰ってきたか。」
科学者風の男が、階段を下りてきた夜奴の方を向き、呟く。
夜奴「あぁ、ただいま……バータ。」
そう言われると、バータは何か液体の入っている物を差し出した。
バータ「茶だ、飲め。」
ズズ、と音を立てながら夜奴が飲むと、バータが話し始める。
バータ「今日の依頼は?」
夜奴「成功さ、結構な儲けだったぜ?」
そうか、とバータは呟いた。
夜奴「コレでまた研究でもやるのか?」
そう言いながら金の入った封筒を差し出した夜奴の手から、
バータがソレを奪い取る。
バータ「あぁ、そうさ。太古の物質をもう一度蘇らせるんだ。実に素晴らしい事じゃぁ無いか?」
そうかね、と呟いた後、夜奴が立ち上がる。
夜奴「……誰か来た、消してくる。」
二人の住んでいる家の後ろにあるゴミ捨て場に死体が三つほど捨てられたのは、
三分後の事だった。
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