第三十三話 君がくれた勇気
「よう、緋芽」
何故だ、とその光景を目に章人が呟く。
「何故貴様がここに居る……!」
「簡単だよ」
俺が如月真那にこの事件を気づかせた。そして彼が悠斗を呼んだだけ。
それだけの、単純な話だ。そう、凌は言った。
「く、……だが!」
そう、彼が手にしているのはモデルR。
万物を殺す終焉のロックマンとしての力。
悠斗は緋芽を抱え、春日と共に飛び退る。
そして、彼の中の力は再び目覚める。
「……デム!」
いつか砕かれた夢の残骸。それが彼の後ろに展開され、
そして卓斗はその中に自らの妹の存在を感じた。
その中に全ての人間のソゥハイトが組み込まれていく。
「馬鹿な!? 何故ソゥハイト同士が融合を!」
それは、如月真那の切り札、その二枚目。
鳴神莉沙の力だった。
孤独を恐れた彼女の生み出したソゥハイト。それの持つ一つの意志は、『結束』。
全てが手を取り合う世界をそこに紡ぐのが彼女の力。
つまり真那は、最初からこの展開に持ち込むための準備をしていた。彼の残した最後のキーはこの手の中にある。
やるべき事は一つだけだ。
既に悠斗の中にももう一つの事件の方で会った人間のソゥハイトは取り込まれているだろう。
残るピースは一つ。
「……篠鐘」
「、」
彼女はこちらを見上げる。
それはそうだ、悠斗はそこにいる。だがしかし彼女の記憶の中にある俺が悠斗を殺そうとしたという俺の作り上げたそれが消えたわけではない。
でも、
「“それ”はお前には似合わないよ」
言いながら春日が篠鐘の額に触れ、そして彼女のソゥハイトは取り込まれた。
「確かにお前の方がそれは似合うかもな?」
悠斗がこちらへと笑いかけながらそう言った。
這い回る闇。
それは確かに日常の中に生きる少女には必要のない物。
今となっては、遠い光の彼方だ。そこに……彼女を帰す。
それが今回の騒動でソゥハイトを再び紡いだ理由だと彼は思い出す。
そして、その手に握られた、真那の残した炎の塊を突き出す。
炎があたりへと霧散し、姿を現したのは全てのソゥハイトを吸収した一つの金属。
ゆっくりと悠斗も一つの金属を目の前に突き出す。
「抗うか、良いだろう……!」
章人もまたそれを構える。
三つ、擬似的に制作されたライブメタルがそこにあった。
終焉を操るモデルR、
災厄を呼ぶモデルI、
そして、
幻想を紡ぎ出すライブメタル。
そうだな、名前は――。
「モデル、D」
自分の紡ぎ出したかつての幻想、その名をそれに与える。
世界を元の道筋に戻す、だなんて。
彼女を日常に帰す、だなんて。
それは今までの俺の存在をまるで全否定するかのような戦いの理由。
変われたのかな、俺は。
もし変われたんだとしたら。変わる勇気をくれたのは。
……“それ”を護るため、彼は叫ぶ。
「ロックオン!」
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