プロローグ
興味本位、だった。
ヒトと言うのは身勝手すぎる物で、それはかく言う俺もまた同じ物だった。
あれだけ幻想という名の世界を欲しがり、手に入れたというのに。何故俺はそれをわざわざ手放し、また元の世界――否、それに似た世界――に戻ってきたのだと言うのだろう?
「別に、今が不幸な訳じゃないだろう?」
神殺しはそう言った。確かにソレはそうだ、俺は何一つ不自由はしていない、そしてこの世界は不幸でもない。
だが、俺、というその個体にとって、その世界は幸福でも無かった、と。
ただ、それだけの話だった。
俺は全てを無くして此処に漂流した存在。
――もう、誰に頼る事も無い、この世界に。
そういう訳でこの世界に、俺はいる。
そして、その世界の、ある夏の日だった。
放課後を知らせるチャイムと共に生徒達が駆け抜けるように教室を出ていく。全くもって忙しい物だ。
「和途!」
声を掛けられたのでそちらを向くと、晶波卓斗が居た。腐れ縁という奴か、この世界に来ても矢張りコイツは居た。そして、俺の近くにいる。
全く愉快な物だ。結局コイツが居る事によっていつも通りの安楽を得てしまうんだから。
しかし、矢張りこの世界はこの世界として面白い物があった。
人間から余りにかけ離れてしまった俺は、人間に興味を持った。そして、それに戻ろうとしている。滑稽な話である。
「ゲーセン、行く約束だろ?」
「ってお前、制服……ま、良いか」
そんな会話をしながら、この世界での俺を紡ごうとしたその瞬間だった。
炸裂音でも爆発音でも無い。
何かと同時に世界が切り離されるような感覚があった。
そして、衝撃。何かも解らない、まるであの世界で起きる出来事のような、力が走った。
「っが!?」
力を最近全く使っていなかった俺は咄嗟に発動出来ず、ロッカーに勢いよく叩きつけられた。卓斗に至ってはこんな展開自体初めてだろう、頭を打ったのか気を失っている。
それに、しても。
「くそっ、たれが……」
つくづく、世界という物は望まないモノに限って与えたがるらしい。
こういう、めんどくさそうな展開は、他の春日が好む物なのだが。
そんな事を考えながら、俺はかつての俺を紡ぎ始める。
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