PF New world ED
ぱたぱた、と雨が降っている。大雨、という程ではないが小雨という訳でも無いので、そこらで雨宿りをしてみる。
昔なら降ってくる雨を自分の周囲限定で分解していけば済む話だったのだが、ペルソナだのソゥハイトだのの能力を失った今となっては使えやしないのでしょうがない。
「それに、こういうのも良いものだし、な」
誰に言うでもなく、どんよりと曇っている空を見ている。ただ、雨が止むまで、このシンセカイの空を。
「悠斗ー!」
ぱしゃぱしゃ、と雨に濡れた地面を蹴って走ってくる音と、女性の声が聞こえる。ふらりとそちらに目線を向けると、紅い傘を持った黒いドレスの女性が走ってきていた。
「やっと見つけた。買い物に行ったきりなんだもの、探したわ」
「しょうがないだろ、雨が降ってるんだから」
はい、と女性が自分の持っていた紅い傘を差し出す。悠斗はそれを受け取ると、女性を傘の中に入れ、降ってくる雨の中を歩き出した。
「なぁ、イセリア」
「何? 愛してる?」
「いや、言ってねぇし」
クスクスと笑いあった後、遙か向こうに見える、街の入り口を見る。
「こういうのも、良いよね」
イセリアがポツリと言ったのを聞いて、悠斗が笑う。イセリアが理由を尋ねるが、悠斗は答えなかった。
晴れてきた空から、天使の羽が落ちてきた。
「リター?」
ひょい、と果物屋の中にジャンゴが顔を覗かせる。その中には大地の巫女が居る。
一番大切で、一番護らなきゃいけない、大切な子。
「あ、ジャンゴ様」
明るい笑顔を浮かべると、リタは数個太陽の果実を持ち、バスケットに入れる。
「行こうか」
「はい!」
手を取り合うと、二人はシンセカイに出来た、太陽の街へと出て行った。
ひらひら、ひらひら。羽はゆっくりと街の入り口へ落ちていく。
「全く、仲がよろしいね」
「どこから見てもな」
真那が呟き、将也も同意する。晴れた青空からは雨なんて降ってこなくて、全く持って平和その物、とでも言った感じである。
「で、何でお前は居るのさ」
「俺は……なんでだろ? カミサマとやらにでも聞いてみれば解るんじゃねぇのか」
将也の問いに、真那は結構あっさりと答えてしまう。確かに、真那は死んだ筈なのだが、何故かこのシンセカイに居る。
「ま、俺が生きてる、って事は、希望が持てるんじゃねぇの?」
「生きてるかも、ってか。……生きてたにしろ、あの子泣かせてたら殴るかな」
いつかどこかで見た、天使を思い出しながら将也は呟いた。
ゆらゆらと揺れる羽は、鳥たちの横をふわりと落ちていく。
「それにしても、平和だね」
「まぁ、僕は実験に使われるわけでも無いし楽で良いさ」
宏邦の呟きに、義和が答える。
実際、此処まで性能の高い人造人間なんて、そこら辺の研究施設が喉から手を出してくるだろう。
が、そういう物が存在するわけでも無いこの世界では、のんびりと過ごすことが出来る。
「シンセカイ、か」
宏邦がポツリと呟く。義和は、敢えてそれには答えず、風を浴びている。
と、ふと立ち上がり、街の入り口へ歩き出す。
「行くよ、宏邦」
「……おう」
宏邦も立ち上がり、歩き出す。
自分たちの真横を舞う羽をちらりと見た後、鳥たちはまた風を切って飛んでいく。
「ほらほら、早く歩くーっ!」
「解ってますってば……」
麗華が声を上げて、総司が荷物を運ぶ。……端から見れば彼女の買い物に付き合わされている人にでも見えるかも知れないが、その実、ただのパシリだったりする。
実際、今総司が持っているのは凌に頼まれて取ってきた品物だし、麗華が持っているのは震電に頼まれた物。
自分で運べば良いのに、とも思ったが、実際暇だったのでしょうがない。
取りあえず荷物を置く。ギルドをまた運営するだなんて、凌も暇な物である。
置いた後、ふと気づく。直感と言うべきか。
「麗華さん?」
「ありゃ、総司も気づいたの? じゃ、行こっか」
総司の問いかけに麗華も気づき、そしてギルドから出る。
目指すのは、街の入り口。
ふわふわと飛んでいた羽は、突然何かに掴み取られた。
「っと、震電」
「あぁ」
機械をがちゃがちゃと動かしていた震電に、同じく動かしていた凌が声をかける。
眼で震電と会話を交わした後、時計台から顔を出し、上を見る。
「卓斗ー、終わったかー?」
時計台が時計台である為には必要不可欠な時計の針を調整していた卓斗が声を上げる。
「終わったけどさ、どうやって降りろと!?」
聞いた凌が時計台の中に入っていく。梯子でも取ってくるのかと思ったら、
「お兄ちゃん頑張ってー!」
妹出してきたよオイ。
「とうっ!」
卓斗飛んだよオイ。能力消えたのに……。
で、時計を動かし始め、あとは下の階にいる某時計台爺さんに任せれば問題なし。
「さて、行きますかね」
凌が言い、そして全員当たり前のように歩き出す。
羽を掴み取った何かは、街の入り口を見て、歩いていく。
全員が全員、街の入り口に集まり、其処で羽を弄っている少年と、その横で笑っている少女を見て、全く同じ言葉を全員でかける。
「おかえり!」
少年と少女は、少し照れくさそうに、答えた。
「ただいま、みんな」
めでたし、めでたし。
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