見上げた空の先に
あれからどれだけの月日が流れただろう。
世界を渡り、悠斗と共に様々な文明や人を見て回り、
時には世界を統一したり、
時にはあからさまな悪役を捻り潰したり、
時には危うく神様として永久に住まわせられそうになったり。
相変わらずこいつはなんでもやりたい放題な生き方なのかも知れない。
「行く先々で事件が起きるだけさ」
「なんという疫病神」
くだらない冗談を言い合っているうちに、
今回の戦闘も終わりを告げた。
何個目か数えるのも飽きた今の世界では、傭兵をやっている。
悠斗の奴はそろそろ二つ名でも背負いそうな勢いだ。
その上忽然と姿を消すだなんて、歴史に名前でも残ってしまいそうで怖い。
そんなことを考えながら撤収した。
毎度ながらの、戦闘を終了させた兵士だの傭兵だのが祝杯を上げていた。
悠斗もそれに混ざるべく歩いていく。
……いや、彼自身乗り気では無いのだが、もっとも活躍した人間が居ないのもアレなのである。
そんな悠斗を横目に、春日は酒瓶とグラスを手に城壁の上へと地面を軽く蹴り到達した。
適当に酒をグラスに注ぎ、一息に煽る。
こうして延々と戦って祝杯を上げての生活をここ最近続けていたからか、そろそろ酒にも慣れてきていた。
もう一杯グラスに酒を注ぎ、ふと空を見上げる。
一面に星がちりばめられていた。
自ら光り輝く星。
どんな世界に行っても、夜空だけは変わらずに星を瞬かせる。
どの世界でも、どんな場所でも。
見上げた夜空が変わらないって言うなら――。
「――お前も、見てんのかな」
「緋芽の事か?」
いつの間にか隣に居た悠斗に驚きを隠せず飛び上がるようにして春日は横を見た。
ある程度盛り上がったからだろうか、適当に逃げてきたらしい。
「なんだ、そんなに気になってたのか」
「気にもなるさね。……あれだけ紡ぐ力が変わっちまったんだから、な」
あの機械仕掛けの神は、しっかりと世界を護っているだろうか?
もう面倒ごとには巻き込まれないと良いのだが……。
「そうかい」
言って、悠斗は空を見上げた。
釣られるように春日ももう一度星空へと視線を向ける。
「世界は繋がっている」
唐突に、悠斗は言葉を発した、
「誰かが誰かを覚えている限り、そいつは消えやしない」
そこまで言うと、彼は黙り、横になった。
最後に篠鐘は、俺のことを呼んだ。
あれは幻聴だったのか、それとも彼女が俺を忘れずにいたのか。
はたまた悠斗が最後の最後にドッキリでも仕掛けやがったか。
(……一番最後が一番確率高ぇ気がする)
そんなことを一人で考え、苦笑する。
ただ一つだけ確実なのは、
壊す、というそれだけのために存在した力が、別の向きに使えるようになった。
人間として、少しだけ俺が変わったと言うこと。
その事実だけで、今は十分だ。
「願って良いんなら――」
右手を、空に向けてのばす。
黒い力がはいずり回り、自分にない光を求めるかのように暗く、暗く鳴く。
次の瞬間、デウス・エクス・マキナを切り離したと同時に消失したはずの、白い力が右腕を包み込んだ。
しかしそれに気づかないまま、春日は夜空に手を伸ばす。
望んで良いのなら、ただ。
「――あいつらが、幸福でありますように、ってな」
俺が、人間であれた理由。俺が、力を紡げた理由。
それが、永久にその光を失うことがありませんように。
見上げる夜空を、流れ星が駆け抜けた。
おしまい。
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